――この国で一番の歌姫をウィルフレッドの妃として迎える。
王子妃選考会に落ち、「役立たずめ」とこき下ろされ、男爵家を追い出されたリナリア。
同時に、自由になったリナリアは、《魔の森》へ入り、歌を歌う。
そこに現れたのは、雪のように真っ白な体毛のウサギ――アルル。
しかし、アルルにはある秘密があった。
「このお方は、セレン王子の隠された双子の弟君、イスカ王子です」
その背景にあったのは、身勝手な人間たちの償いに巻き込まれてかけられた呪いと陰謀。
それを解くには、《花冠の聖女》が『光の樹』を甦らせるしかない。
セレンを案じリナリアを守るイスカと、イスカを救いたいと願うリナリア。
身勝手な人間に振り回されてもなお、自分を見失い二人は、運命を変え、お互いの手を取り合うことが出来るのか。
歌は消えても、最後は愛が残る。そんな物語です。
第二王子の妃となるべく、男爵家に引き取られた元孤児のリナリア。
しかしそこで待っていたのは、地獄の淑女教育。しかも妃選考会に落ちると、役立たずとして屋敷を追い出される羽目に。
酷い! そっちの都合で引き取っておきながらポイなんて、リナリアが可哀想です!
とはいえそれまでの男爵家での扱いも良くないものなのだったので、これで窮屈な生活とサヨナラできると、内心喜ぶリナリア。
そしてそんな彼女には、心の支えになっていた存在が。
それは男爵家の近くにある森で出会った、真っ白なウサギのような姿をしたキュートな魔物、アルル。
魔物でも人を襲うわけではなく、リナリアのために花を持ってきてプレゼントしてくれる、かわいくていい魔物なのです!
こんな魔物となら、自分も仲良くなりたいですよ。
リナリアもアルルの事を可愛がり、時に添い寝をしたり、時に頭にキスをしたりと、とっても仲よし。
しかし、この物語は女の子が魔物をモフモフする癒し話では終わらなかったのです。
物語の途中、実はアルルは呪いで魔物の姿に変えられた、王子様だということが判明するのです!
った、ちょっと待って。リナリアはそのアルルに、キスしたり添い寝したりしてたんですけど!?
王子様相手にとんでもないことをしたものです。下手したら王室不敬罪で、首が飛びかねません。
はたしてリナリアの運命はいかに!?
……なんて書きましたけど、たぶんですが大丈夫でしょう。
だってアルルもリナリアの事大好きなはずですし、きっと許してくれますよ。
幸薄な女の子とモフモフなウサギの、友情から始まる大騒動。
リナリアにもアルルにも、幸せになってもらいたいです。
平民に生まれ孤児として育ちながらも、男爵家に引き取られ第二王子の妃となるべく特訓を受けたリナリア。
平民から王子の妃候補になるなんてすごい。などと思ってはいけません。
そのための淑女教育は地獄のようで、引き取った男爵からも愛情は一切なし。只々自らが王子に取り入るための道具としか考えていませんでした。
そしてそうまでして頑張った王子の妃の座も、他の令嬢の策略によってあえなく脱落。
男爵家を追い出され、一人で過ごしていくことになったのです。
……いえ、一人ではありませんでしたね。
そんなリナリアの味方は、森で出会ったウサギに似た魔物、アルル。
魔物といっても怖くはありません。むしろ可愛く、リナリアがピンチになれば守ってくれるくらいに勇敢です。
何より、ずっと心を許せる人がいなかったリナリアにとって、純粋に自分を慕ってくれることが、嬉しくないはずありません。
多くのものを失ってしまったリナリアですが、アルルと一緒なら、楽しくやっていけるはず。
なんて思っていたら、事態はさらに一変。ちょっと変わったウサギ形の魔物と思われていたアルルには、実はちょっとどころではない大きな秘密が。
それを知った時、リナリアはかってないほど動揺するのですが……
可愛さを愛でるもよし、真実を知ってドキドキするもよしなアルルは、ある意味最高のヒーローなのかも。