「終わり」の切り取り方が秀逸で、詠まれた世界を追体験できる一首

「微熱から私が丸くこぼれてく花火みたいな終わりはこない」

「花火みたいな終わりはこない」という下の句がとても印象的でした。たしかに「終わり」というものの大半は花火のようにわかりやすく、うつくしく訪れるのではなく、もっと静かにやってきて、気がつけば去っているようなものなのかもしれません。この静かなイメージと、「微熱」という単語がよく似合っていて、しんしんと悲しみを増しているようです。「私が丸くこぼれてく」という表現もおもしろくて、微熱のからだから、自分自身が輪郭に沿って失われていくような感覚を、わたしは感じました。「丸く」という言葉が感覚を下支えしてくれていて、より具体的な説得力を持たせているところも魅力です。一首を読み進める中で、「しずかな「終わり」によって失われていく自分自身」を追体験できるような感じがして、とても好きな短歌でした。


(「短歌、わたしたちだけの踊り方」4選/文=初谷むい)