小さな命と、幼い命の、心のやりとりを描いた作品です。読み進めれば読み進める程、より命に近づいていく感覚。ペットを飼った経験の有無に関わらず、深く感じ入るものがあると思います。地に足のついた澱みのない文章で、読者の心を正しく導いてくれるこの作品は、カクヨムに潜在する名作の一つだと思います。ちょっと泣きそうになってしまった。
“命が絶える”ことを始めて生々しく感じる。それは、形は違えど、誰にでもあることなのでしょう。やがてはその鮮烈な体験も摩耗し、悲しみや罪悪感とともに、深海のごとき記憶の底へと隠蔽されてしまうのかも知れませんが、本作はその体験を、じつに仔細な描写によって再現してくれます。深海――竜宮からの使い、その姿を、あらためて見つめてはみませんか?