第29話 イチャコラバカップル

 俺らが車に乗ると、ジェンサがハンドルを握って出発する。

 何というか、富裕層の気持ちってこんな感じなのかもな……。

 少しだけ気高になっていると、隣に座っていた雛がポンと肩に頭を乗せてきた。


「雛……?」

「むう、ここ最近かまってくれなかったでしょ?その埋め合わせ、今して」

「い、今じゃないとダメか……?」


 恐る恐る聞くも、雛は首肯を肩の上で返す。

 しゃあないとため息を吐き、そっと雛の頬に触れた。


「んっ……」


 雛が目を瞑るのを合図に、俺は雛の唇に自身の唇を重ねる。

 相変わらず瑞々しい感覚が唇を覆う。

 7秒ぐらいしたところで唇を離そうと顔を下げるが、雛はまだ足りないと言わんばかりにさらに深く唇を重ねる。

 そうこうしていて、30秒前後キスをしていた。

 雛が満足そうに唇をゆっくり離すと、お互いに息が荒くなっている。


「ひゅー、お熱いこって!」

「ガルザン、野次を飛ばすのは良くないですよ」


 と、ここで最強さんから揶揄いの言葉が飛んでくる。

 それだけじゃなく周りの人たち、男性陣はニマニマしており、女性陣は顔を赤くして窓の外を見ていた。

 そこで俺と雛の二人の体温が急激に上がっていく。

 や、やっちゃった……。


♢♢♢♢♢♢


 しばらくして、日本組は俺以外寝てしまっていた。

 クラー、そういえば気になってたんだけどさ。


『……?』


 ガルザンとジェンサが喋ってるのは英語だけど、どうして日本語に聞こえてくるんだ?


『ああ、それはですね。異能力によるパイプ機能が働いているからです』


 パイプ機能……?何だ、それ?


『パイプ機能というのは、テレパシーの劣化版のようなもので、早い話、相手の言いたいことが直前に脳へと直接、信号として送られてくるんです』


 なるほど。それでガルザン達の言ってることが理解できるんだな。

 ちなみに、あっちは俺の言ってることを理解してるのか?


『してますよ。私がこの技術を出来ない人だと思っているんですか?』


 さすが我らが万能相棒。頼りになるわ〜。


「うお!おい、ジェンサ!車を止めてくれ!」


 クラーと話していると、急にガルザンが停車を促し、車が道路の端に止まる。

 一体なんだと思ったら、ガルザンが目にも止まらぬ速さで車から飛び出して行った。

 まさか、特殊災が……


「Hey、そこの綺麗なお姉さん!俺とあそこの車でドライブしない?」

「……」


 な、ナンパ……?

 ふとジェンサを見ると、またかと言った感じで眉間に皺を寄せている。

 俺は察して、すぐさま下車。ガルザンに気配が悟られぬように自身の身体を気体に近づける。


「いや、ちょっとだけだkぐえっ!」


 俺は拳をガルザンの脇腹に一閃。

 その衝撃に耐えられずにそのまま気を失った。

 俺はガルザンの身体を軽々と持ち上げ、女性にペコリと一礼。

 そのまま車に戻って行った。

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俺の彼女の厨二病戦録《シンドローム・メモリアル》 瑠璃 @20080420

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