第5話 強化アイテムは燃えるよね




 晴明高校には色々な設備がある。グラウンドのような定番施設から、異能訓練場にジム。


 そして異能テック研究所まであるのだ。白い建物に入り、コスチューム相談室という部屋をノックする氷川。


「こんな親切な部屋あったっけ」


「オリエンテーションで聞いたでしょ。僕も来るのは初めてだけど。失礼します」


 白衣の女性が1人いた。部屋には色々な実験器具が。


「1年龍組の氷川雪緒です」


「同じく、池亀レナです」


「フォースカンパニー客員研究者、咲山椿さきやまつばきです」


 フォースカンパニーって、コスチューム作ってる企業だよね。


「じゃ、コス見せてくれるかな?」


 私たちは変身時計でコスに変身。途端、咲山さんの目がギラギラ。


「バトル科は全員分把握してるぞ!」


 どこからともなくタブレットを取り出し、私たちのコスデータを見せてくれる。


「デザイン変える!? 補強アイテム追加する!?」


 どうやらノイズ先生と同じタイプの人のようだ。氷川は若干引き気味。


「えーと、DNA入れた指輪って作れます?」


 咲山さんは頭に花を咲かせながら、うんうんと頷いた。


「御霊の仮面にも、髪から抽出したDNAが入ってますよね? だから目元を隠しててもバッチリ見える」


 そんなテックがあったのか。


「つまり氷川くんの髪からDNAを抽出して、指輪にする。それに池亀さんが触れればコピーが可能ってことね!」

 

 任せなさい! と咲山さんは氷川の髪の毛を拝借し、フラスコに入れたりなんなりし、最終的に水色の液体をシャーレに。


「さあ触れてみて!」


 私は指先で液体をつつき、手のひらに氷を作ってみた。できちゃった!


「これを固めれば指輪の飾りになるってことなのだ!」


「これなら本人がいなくても武器増える……すごいよ氷川!」


 別に御霊からヒントもらっただけ、と氷川は頬を掻く。今すぐ申請しちゃう!? と、申請画面をタブレットに出す咲山さん。


「デザイン決めてから申請します。ありがとうございました」


 いつでも来てね! 咲山さんは最後、ほとんど叫んでいた。成人女性のサンプルが偏るなあ。






*********


 



 談話室にはソファスペースだけでなく、テーブルと椅子が置いてあるスペースもある。私たちはそこでデザインの話し合いを。


「指輪は花の形にしたら? チョウチョなんだし」


「お、可愛い!」


 これで決定。咲山さんに申請しちゃおう。


「でも15人分かあ」


 ノイズ先生と決めた最終目標は、クラス全員の異能をコピーすること。それが達成されると、アクセサリーがかなりごちゃつく。


 指全部につけたら不便なので、両手の親指、中指、小指で6人分。イヤリングで2人分。あとはブレスレットを右手首に。


「氷は一番使いやすいところにつけときなよ。左手のどこかとか。僕の異能、悪くないでしょ?」


「待てよ……石とアクセサリーは分割できるようにしたらいいんじゃないかな……その日使うメインを左手にって感じで」


「あーはいはい、それでいいんじゃないの」


「よし、みんなから髪とか爪もらって、咲山さんのところに持っていこう!」


 私はみんなにメールした。







 10分後、全員が持ってきてくれた。


「氷川も面白いこと考えたんだね。でも私の異能は万年ベンチだよねえ」


 可憐が苦笑しながら、ジップに入った爪をくれた。


「俺の毒は気をつけろよ」


「市街地に放火するなよ!?」


「ガンガンデバフに使っちゃって!」


「部屋の模様替えにでも使ってくれ」


 みんなから爪と髪を回収。これは全て液体に変えられ、固められ、宝石のような形にカッティングされる。


 あとは石をはめる指輪、イヤリング、ブレスレット。これで申請ができる。できるんだけど……。


 鈴音だけ来てなかった。氷川のことまだ怒ってるのかな。


「おい氷川」


 突然、加賀が低い声で氷川を睨む。やっぱりこいつヤンキーだよね。


「もう女子は嫌いじゃねえのかよ」


「そんなすぐに治らないよ。でもクラスの女子に冷たくするのはやめる」


 あ、そうだ。謝らないと。氷川は立ち上がる。


「針ヶ谷さんにね」





***********





 そんなわけで、寮の裏手で鈴音を待つ。氷川は鈴音になんて言ってたっけ……


『針ヶ谷さんと違って、池亀さんはメンタルが安定してるからね』


「あれはさすがにダメでしょ。でもなんで池亀さんがいるの?」


「アクセの件で。それに2人が喧嘩しないか心配で……」


「暴れないでよ!? 池亀さんが一番危険なんだからね!」


 あ、来たよ。鈴音の顔は険しい。可愛い子の不機嫌な顔はそれだけで怖い。


「なんなの氷川」


「謝りにきた。メンタルが安定してないとか言ってごめんね」


「どうせ氷川の自己紹介でしょ? どうでもいいよ。

 それよりもなんでレナと仲良いの? あんなに嫌ってたくせに。レナがいい子だからって粘着しないでよ」


 これはまずい。


「もうあのことはいいんだって! 氷川には事情もあって……」


「親の漫画読んだけど、あの程度で虐待されたとか被害者ヅラしてたんだ。よくあることじゃん。何かのせいにしてれば人生楽だよね」


 どうしよう、今の氷川に必要なのは記憶の塗り替え。これじゃ振り出しに戻ってしまう。


「甘えるのも大概にして。そんなんで社会でやっていけると思ってるの?」


 わからないのかな。可愛くて明るくて、ずっと人気者だったら。もしかして私の過去にも同じこと言うのかな。


「それにあたしだけじゃないでしょ。女子全員に冷たくしてたじゃん」


 でも氷川の表情は変わらなかった。


「女子みんなに謝るよ。許してくれなくていいよ。時間取らせてごめんね」


「レナ行こう。氷川も消えて」


 鈴音に手を引っ張られた。思わず振り返る。氷川は手でメガホンを作った。


「僕をまともにしてくれてありがとね!」








「レナ、氷川と仲良くしないで。あたし、あいつ大っ嫌い」


 寮の玄関で、鈴音は見たこともない顔で私を脅してきた。腕を強く掴まれた。一瞬息が止まり、頷きそうになる。


 だって鈴音は友達だから。


 でもギリギリのところで踏みとどまった。これは折れちゃいけないところだ、直感的に思ったから。


「それはできないよ。誰と仲良くしようが私の自由だから」


「そう。お母さんが優しいと博愛主義者になるんだね」


 そのまま鈴音は女子寮に行ってしまった。





次回予告!


 突然怒り始めた鈴音。戸惑うレナだが、氷川だけは事情を知っていた。


 それを知ったレナはベランダに2度目の突撃! コンプラ無視主人公ラノベの明日はどっちだ!

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友達の異能をコピーする  タマイジュン @TamaiJun

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