三つ目のサプライズ

マサユキ・K

*****

今日も、昼休みになってしまった。


僕はいつもの公園の、いつものベンチに腰掛ける。


一頻ひとしきりぼんやりした後、ランチバッグに手を伸ばす。


取り出したのは、ラップにくるまった【おにぎり】が三つ。


最初の一つにかじりつくと、塩昆布の歯応えと程良い塩味が口中に広がった。


おいしい


早々に食べ終え、二つ目を手に取る。


口に入れた途端、焼きタラコの風味が鼻を抜ける。


プチプチとした食感が、また格別。


おいしい


いよいよ、最後の一つ。


さて、具材は何だろう?


僕は躊躇した後、思い切って口に入れてみた。


何も……入っていない……


……そりゃそうか



三つ目の【おにぎり】はサプライズ──


何が入っているかは、食べてからのお楽しみ──


君のいつもの口癖だ。


ピクルス、ミートボール、フライドポテト……


食べるたびに、驚かされたなあ。


そんな僕を見て、君はいつも笑い転げてたっけ。


でも……そのサプライズも、今は無い。


そう


君が、お星サマになったあの日から……


でも、今でも毎日【おにぎり】は作ってるよ。


君との思い出を忘れたくないから。


これで終わりだなんて、思いたくないから。


だから、必ず三つ作ってるよ。


君が、毎朝してくれていたように。


ただ……サプライズだけはできないや。


自分で作るから、中身が分かっちゃうもんね。


だから、今だに三つ目は何も入れられないんだ。


君は、すごい奥さんだったんだな。


毎日毎日、いろんな具材を思いついて。


君は、最高の奥さんだったんだな。


人のために


僕のために、あんなに頑張ってくれて。


かなわないよ。


君には。


寂しいよ。


寂しい……



「……しょっぱい!?」



もうひと口かじった僕は、眉をひそめる。


【おにぎり】に目を落とすと、湿ったように光っていた。


頬をつたう涙が、落ちちゃったみたい。


何も入っていない【おにぎり】が、その時不思議な味がした。


しょっぱいけど、ほんのり甘く……そして、切ない。



「これも、君のサプライズかい?」



僕はそう呟いて、また天を見上げた。


雲一つ無い青空が、どこまでも、どこまでも続いている。



「このサプライズ……僕は……苦手だな……」



囁く僕の耳元で、そよ風が笑うように音をたてた。

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三つ目のサプライズ マサユキ・K @gfqyp999

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