最終章 旅立ちのとき
数年後。
無事に大学を卒業し、いよいよ世界に向けて旅立つとき。籍だけを入れて結婚式は後回し。新婚旅行がわりに世界中をまわって新しい時代を目指す農業の現場を見、話をし、共に働き、仲間を作る。そして、一緒に未来を作る。
そのための旅。
何年かかるかわからない。
それでも、
「安心して行ってこい。畑はおれたちに任せてな」
大学四年間、
「ああ、任せる」
そう言う
「お前も、
「そう言われると光栄だな」
と、この数年間でますますメガネ優等生振りに
その横では
「がんばってね、
「忙しい旅になるだろうけど、たまには連絡ぐらいよこしてよね」
「そうそう。外国の女は積極的なのが多いんだから。
「なに言ってるの」
と、
「
そのあまりに堂々とした
搭乗の時間がやってきた。
「ねえ、
「うん?」
「あたし、日本を出るのははじめてなのに、ちっとも不安じゃないの。ううん。正確には不安もある。でも、それよりなにより楽しみで仕方ないの」
「なんで?」
「あのとき、あなたに嘘告する前、あたし、あきらに言われたの。
『別の世界の人間と付き合うのも良い勉強になる』ってね。
いまにしてつくづく思うわ。あきらの言ったことは正しかったって。あなたと出会うことであたしの世界は広がったし、人生そのものもかわった」
「ああ。おれも同感だ」
「ギャルなんて一生、縁がない相手だと思っていたし、関わらなくてもなにもかわらないと思っていた。でも、君と出会ったことで、たしかにおれの人生はかわった。世界も広がった。未来の選択肢も増えた」
「そう。だからね。あたし、いまもこの旅でどんな新しい世界が見られるんだろう、人生がどうかわるんだろうって、すごいワクワクしてるの」
「ああ、おれもだ」
ふたりはしっかりと手をつなぎ、目を合わせた。
「さあ、行こう。新しい世界に」
「うん!」
完
嘘告からはじまるカップルスローライフ 藍条森也 @1316826612
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