50まいる

幸まる

“まいる”って、なぁに?

テレビで子供番組を見ていた4歳のゆうちゃんは、イギリス発のアニメで『50マイル』という言葉を聞いて、首を傾げた。




「まぁちゃん、まぁちゃん、“まいる”ってなぁに?」

「“まいる”?」


リビングのテーブルに、宿題を広げていた小学三年生のまぁちゃんは、妹のゆうちゃんの質問に首を傾げた。


そして、ふとひらめく。


手元には、国語の宿題で使う国語辞典がある。

使い方は、昨日の授業で習ったばかり。

これは復習にもってこいだ。

早速“ま行”を開き、パラパラめくる。


「ま、ま、まい……まいにち……まいゆう……まいる。あった! “まいる”!」


まぁちゃんは意味を読み上げる。


「『行く・来る の、けんそん語』」


……ん?

けんそん語って何だろう?

分からないから、次。


「それから、『寺・神社におまいりすること』」


テーブルの端を持って見上げているゆうちゃんの顔は、ぽかんとしている。

お正月くらいしか神社に行かないのだから、ピンとこないのは当然だ。

うん、次。


「えっと、あとは…『負ける。降参する』……あ! 負けた時に言うやつだ!」


パッとゆうちゃんの顔が輝いた。


「プロレスごっこした時に、パパが言うやつ!?」

「それそれ!『わ〜!まいった!降参だ〜!』ってやつだ!」


まぁちゃんがパパのモノマネをして言うので、ゆうちゃんはケタケタと笑う。


「じゃあ、“50まいる”は50回負けたってこと?」

「そうだねー、パパはボロ負けだねー!」


まぁちゃんは椅子から転げ落ちるようにして、ボロ負けして無様に倒れるパパのモノマネをする。

ゆうちゃんが大笑いして、床に転がったまぁちゃんの上に乗る。

まぁちゃんが「まいった〜!」と更に言って、二人は大笑いした。






……正解の“マイル”は、多分“まいる”の後に載っているんだけどね。


台所で、夕飯を準備しながら聞き耳を立てていたママは、笑いを堪えてぷるぷると震える。



今夜、パパは仕事から帰ったら、娘達のプロレスごっこに付き合わされるに違いない。

50まいるまでやめてくれなかったら、さすがにかわいそうだから止めてあげようか。


そこまで想像して、ママは堪えきれずに吹き出したのだった。



《 おしまい 》

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50まいる 幸まる @karamitu

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