【あとがき――という名の簡単な解説】
はじめましての方ははじめまして、そうではない方はいつもお世話になっております。
吹井賢です。
こちらの『幻想のロイヤリティー』は、カクヨムWeb小説短編賞2023に応募する為に書き上げた短編なのですが、実のところ、タイトルと『朱雀門憂』というキャラクターは、十年以上前に考えたものです。元は長編を書くつもりだったんですよね。革命家が主人公となると、話作りが難しくてやめたのですが。今回の短編は、その長編の前日譚に当たるような作品です。時系列的には『破滅の刑死者』の数年前の話ですね(『赤羽党』の名前自体は二巻で出ています)。
人種差別問題や選民思想が絡んでくるために書きにくい……というか、商業では無理だな、と諦めて、個人的に書いたという側面もあります。主人公が差別主義者って、流石に駄目でしょう。
しかし、彼が本当に人種差別主義者かと言うと微妙な話で、この話のラストもそれを示唆する感じにしています。憂は、静に惹かれながらも、彼女の在日二世という要素を以て、彼女を「ソトの存在」と位置付けます。だから、「多分、嫌いだ」と告げたのです。思想的に、また、立ち場的に嫌いでなければ一貫性がないからと。恋心を斬り捨て、ウチとソトを切り分け、一線を引いたのです。
彼は差別を肯定するキャラクターですけど、「『差別』とは何か?」「『国家』あるいは『国民』とは何か?」を批判的に語ってくれる奴であるので、また活躍させたいですね。
あ、テーマソングは『セレナーデが止まらない』です。苦悩と葛藤を夜に吠えるカッコいい曲ですね。
この作品が、皆様の一時の楽しみになれば、それが作者にとって最高の喜びです。
それでは、吹井賢でした。
幻想のロイヤリティー 吹井賢(ふくいけん) @sohe-1010
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