パンデミックと終末世界。人の有り様を描く秀逸な物語

序盤から世界観が提示され、その有り様は記憶に新しいあの出来事を彷彿とさせる。
そう、あの世界的パンデミックだ。
作中に出てくる人物は決して「記号化」された存在ではない。
知識なく慌てふためく人々の様は、皆大なり小なり見聞きしただろう。
世界を巻き込んだあの騒動は、人の内面を否応なく露にした。

一方この物語は、終末世界を描いたSF作品である。
世界の鍵を握るのは一体誰なのか。
そして「ヤングケアラー」とはなんなのか。
いわゆるディストピア作品とも共通性が見られ、漂う空気感は確かに終末を感じさせる。
落ち着いた文体から作者の力量は疑うまでもない。
人という存在を確かに描き、パニック要素とドラマ性に富む優れた作品をお薦めしたい。

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