カウントダウン
:6月23日 2週間前:
今日はすこぶる天気が良いようだ。それなのに今日も私はベットの中。先生がどうしても許可をくれないのだ。3日前に風邪をこじらせてしまい、外に出ることができない。せっかく新しい髪飾りを買ってもらえたのに、早馬さんに見せることができないじゃないか。しかも、この病室からあのテラスを見ることはできない。病室を変えてもらおうと思ったのだが、そんな我儘は通らなかった。そりゃそうだろう。この世で最も長いのは母の説教だと思っていたが、どうやらそうでは無いようだ。しかし一人で一日という時間を過ごすのは本当に辛い。きっと学校に通っている頃はそんなこと思わなかったのだろうが、その時の私に言ってやりたい。一日は本当に長いのだ。先程辛いと言ったが、あれは生活が困難な訳ではない。決してこの病院の設備が悪くて不便だと言っているのではなく、一人で時間を過ごすのが苦痛なのだ。たまに看護師さんが様子を見に来てくれるけど、熱を測って出ていくだけ。会話といえばあの瑠生って奴も来なくなった。内田先生に相談したら、「看護師さんはどの人も優しいから、話しかけてみなさい。」と言われた。あと単純に瑠生は学校の勉強についていけず塾の日数を増やされただけだそうだ。あんな奴うるさいだけと思っていたが、いざいなくなると寂しいものだ。「看護師さんに話しかけてみる作戦」。成功率???%。一度は試してみた。そして、失敗した。話しかけ方が分からなくて、来てくれた看護師さんに「今暇ですか?」なんて聞いてしまった。看護師さんは微笑んでいたが、仕事なんだから暇なわけがない。それに、色々な人のお世話をしているのだから、人1倍大変なはずだ。案の定、その看護師さんは今までの優しげな態度を翻し、帰り際に私を睨みつけてから病室を出ていった。私が看護師さんに尋ねた時の微笑みは、怒りによる硬直だったのかもしれない。今考えるとそれは大人としてどうなんだろうと思えるが、その看護師さんはそれっきり私の病室に来なくなった。こうして、私は自分がコミュニケーション能力も語彙力も持ち合わせていない極度のコミュ障だということを知った。もしかするとストレスが溜まっていたのかもしれないが、いらないことを言った私も悪い。というわけで、看護師さんと仲良くなろう作戦は諦めた。頭の中では不満ばかりで、楽しいことは何一つ思い浮かばない。早馬さんのことを思い浮かべても、あまり気が乗らない。うー。これは悪循環だ。しかし暇を潰せるものも何もないし...。
...抜け出しちゃおっかな。うん。これが一番手っ取り早い気がする。
暇すぎてそろそろ私の脳内もネタに走り始めているのだろうか?
バグった脳を鎮める前に、私の足は動き出していた。
あの日の空をもう一度 綾 @kana-8103
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あの日の空をもう一度の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます