考えすぎ人間:突然の出会いの場合

「お前の考えだが、明らかに間違っている部分があるだろう」

「え、どこの事でしょうか?」

「いや、仮にお前をおびき寄せるための罠だとしたら操られているという可能性なんてわざわざ書かないだろう、しかもおびき寄せるにしても具体的な場所を書いていないだとかで罠にしては誘う気が感じれない」

「確かに...いつもの癖で視野が狭くなってました...」

「お前のそれは1つの物ごとに対して深く視点を持てるっていうのは良い点だが、視野が狭くなりすぎるのは良くないとは稽古でいつも言っているな」

「はい、頑張って直します...」

「あぁ、お前は筋はいい。お前の中で答えを出せることを願う。それはそれとして、だ。シグ、おそらくはお前の父親から助けの手紙が来たわけだがお前はどうするつもりなんだ?」

「そうですね...今考えている所なんですが...」

そう、家族を助けに行くという選択肢を取るのであれば、手がかりを得るための旅に出る必要があるという事になる。俺は考えすぎるのは良くないとは思っているが家族を見捨てるなんてできない!と、何にも考えずに突っ込んでいくのも良くないとは理解しているつもりだ。確かにこの世界がどこもかしこも治安が悪く命の危機に晒されるなんてそんな世も末な状態では無いのはわかっているが、だからといって少ないわけでも無いのも事実だ。

モンスターによる物や人からの悪意による物もあるだろう。実際に俺の両親は人の悪意に晒されて現在とらわれている。加えて今回はリーバさんの助けも得ることができない状態。つまりは当分は、いやもしかしたら最後まで俺1人の可能性も大いにあり得る。だからこそ、これは安直に結論を出すものではないと思う。

「もう少し時間をかけてもいいですかね?答えを出すのに」

「あぁ、お前もまだ17になったばかりだ。その歳の奴に任せるには重いものがあるだろう。あいつの事だ俺が手伝う前提で送ったかもしれん。」

「かもしれないですね...」

「あの手紙の中には他の奴にも届いているかは別にして同じような内容の手紙を送ったとあった。安直な考えかもしれんが俺達に届いたという事は他の奴にも届いている可能性だってある。一度考える時間はあるだろう」

「...確かに、じゃあ一度考えてみます」

「あぁ、そうするといい」

と俺の言葉でその日の突然の手紙に関しての話題は一旦締めくくられたのだった。


そこから数日後、俺はといえば...

「ふ~、久しぶりに村から離れた所に来たけどやっぱいいな」

個人的な用事もあって村から離れた町であるファルカに向かっている途中だ。

個人的な用というのは

「いやぁ、なんか新しい魔道具とか出てないかな~最近進化がすごいからなぁ」

ファルカには品揃えの良い魔道具店があり、店主とも顔なじみになるぐらいにはお世話になっている。今回も気分転換という名の重すぎる選択からの現実逃避の為にその魔道具店に向かっている最中だ。

「この道も慣れてきたな~」

俺が通っているのはファルカへと通じている道だ。この道はそれなりには整備されているが、おそらく最近は全然整備されていないんだろうなというのが、ファルカへの道のりを書いてあるのであろう看板を見て分かる。雑草とか木もめちゃ生えてるし。

「こ...道...ば...フ...ルカってもうほぼ読めないじゃん」

この様子だと魔物除けの魔道具も使われていないだろうなぁ...最近はこの辺りに魔物がいないからって適当すぎないか?まぁ実際最近はここらに魔物は出ることは滅多にないからなぁ...

「平和ボケしてるのは俺以外もか...まぁもう魔王いないもんなぁ」

俺が生まれるちょっと前までは魔族と人間は対立していて、なんやかんやあって魔王が倒され、なんやかんやあって今の平和な世界に至るそうだ。さらにそこに至るまでにまたなんやかんやあって色んな国に変化があったらしいけど詳しくは知らない。

「今は冒険者が何とかしてくれるしね」

そう、魔王は倒されたわけではあるがそんなにすぐに全ての厄介ごとが消えるかと言われるとそんなわけもなく、なんなら俺みたいな平和ボケした人間が増えたせいで全体的には依頼量が増えているまであるらしい。

「俺も仮に行くとしたら冒険者としてじゃないとやっていけないよなぁ...はぁ...」

現実逃避のために来たのに、思い出してため息が出てしまった。

「...ん?なんか騒がし...」

「ちょっと、そこの人!!助けてええええええええ!!」

後ろの方から突然俺に向けたものであろう女性の声が聞こえて驚いて振り返ってしまう。するとそこには茶色の髪をした女性が鬼気迫る表情でこちらへと向かってきていた。

「え!?ちょっとちょっと!!なにそのバカデカいスライムぅううううううううううぅうう!」

そしてその後ろには何故か女性の2倍くらいの大きさになっているスライムが着いてきていたのである。

「こっちが聞きたいわよぉぉぉ!もう魔力が無いから対応できないいいいいいいいいいいいいいい!たすけてぇぇええ」

ちょっっ!?おいおいこっちに合流しにきてるって!

「助けてって言われても!!えーっと、えーこれどうすればいいんだ!?」

「ポーションはない!?それで魔力さえ回復できれば、こんなヤツ...!」

「ポーションなんてそんな高いもの持ってませんよ!この薬草じゃダメですか!?」

走りながらポーチから草を取り出して謎の女性に見せる。

「は!?草なんて食えないわよ流石に!」

「いやいや、そんなこと言ってる場合じゃないですって!食ったら何とかなるなら食ってくださいよ!ファルカまでまだかかりますよ!」

何でためらってるんだよ!この状況で!!やばいって!くそまずいのは分かるよ!?分かるけども!もうこの全力疾走するの限界だって!

「いや、でも!...私は...」

もうダメだ!これはやるしかない!

そう心の中で覚悟を決める。速度を上げて謎の女性の前に出て

「あーもうめんどくさい!いいから食ええええええええ!!」

「ちょっ!?うぐっっ....」

肩を掴んで無理やり口の中に薬草を突っ込む。

「ごめん!でも、これで...!」

よし、申し訳ないとは本当に思ってるがこれでなんとか...!

無理やり食わされた謎の女性が今も近づいてきているバカでかいスライムに向き直りスライムに対して反撃の一撃を放つ...

「おrrrえええええええええ....」

「...あ、これ終わったわ...」

という希望は、ある意味反撃の一撃と呼べるかもしれない、嘔吐によって潰えることになってしまったのだった。

「この...鬼...め...」

「ごめんなさああああい!」

フラフラしている謎の女性に駆け寄り、水筒に入った水を飲ませる。

だってポーションなんてもの持ってるわけないじゃん!冒険者じゃないんだし!

俺だって心は痛んだんだよ!でもやるしかなかったんだよおおおおおおおお

そう心の中で頭を抱えていると、目の前に影が迫ってきて意識を引き戻される。

「あっ...ごめんなさぁ~い...」

そう言葉が通じているか分からない化け物謝罪した俺は、フラフラしている女性を背負い、吐しゃ物と化け物を背に無謀な逃走を試みた。

「はぁ、はぁ...本当は重くないんだろうけど、今の体力でこれはキツいいいい頼むうううううううう」

と無い体力を振り絞って走っていると、すぐに違和感に気が付いた。

「あ、あれ?」

そう、あのバカでかスライムが追ってきていないのである。

気になって何が原因か分かる距離へとおそるおそる近づいて確認するとそこには、あの吐しゃ物に覆いかぶさっているバカでかスライムがいたのだった。

「マジかよ...今なら無防備だけど俺だけじゃなんとかできる気がしないな...一度体制を整えた方がいいかもな」

と、背負っている謎の女性の状態を見て考える。全然人が通る道ではあるけども今のままじゃどうしようもない。あのゲ○次第ではあるけど、しばらくは大丈夫だと思うしかない。でも早めに何とかしないとまずい...とそう今後の方針を立てて一度離れることにするのだった。









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考えすぎシグルスのグダバタ冒険記!! 春 楓 @harunokaze315

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