第9話 - レガーの覚醒

 聞こえてきたのは昨日の朝家を出る時に聞いたあのオハンの声だった。自然のサルバの右目から涙が落ちていた。


 「この部屋に入り、ネックレスに触れたということは俺に何かあったんだろう。おそらく死んでいると思うのが妥当だろう。この部屋は俺が生きていればドアノブに触れた瞬間俺がわかり、力で開けたとしても階段を下れないようにしておいたからね。。サルバお前がこのオーパーツに触れるとメッセージが届くようにしたんだ」


 毎朝起こされていたあの無愛想声とは全く違う父さい子に語りかける父の声だった。


 「ずっとそばで守ってあげようと思って。。ヒルアと約束して十二島のここに逃げてきた。サルバ、俺たちはオレガノフ家の末裔で今の世界から排除されている家紋だ。それを隠して生きていたが隠し切ることができず、、それのせいでヒルアはサルバが1才の時殺されたんだ。君を産んで死んだのではない、右の引き出しにいる君と同じ髪色女性が。。お母さんだ」


 サルバは初めて右の引き出しをあけて初めて母の顔を知った。それと同時に自分が生まれた時に亡くなったのではない事実を知り、少しばかり重荷が降りた気分だった。


 「サルバのそばに入れなくなった今、限られた時間で伝えることが二つある。まず動ける状況であればマリガティア共和国のテンバスのカイガン•ビセクに会いに行ってくれ。ヒルアと俺の古い友人だこのネックレスとヒルアの写真を見せてサルバだと伝えると助けてくれるはずだ。。そして、出発前にこのネックレスを首にかけて書斎の最上段にあるオーパーツの本の裏にある宝石に触れてくれ。サルバ、君が思う生き方で好きにやっていくんだ。ヒルアと俺の子だ。。本当の君は君が思う以上に強い」


 そういうとネックレスから声が聞こえてこなくなった。サルバはしばらく考え込む様子だったがすぐに行動をとりはじめた。


 「どのみち今日中にここを去るつもりだったけど、まずはテンバスを目指すか」


 ネックレスと写真を手に取り部屋から出てきてベットの位置を戻してサルバは再度本を手に取って後ろの宝石に手を触れた。


 紫の強烈な光が部屋を包み、本が開いた。本の最初のページにはメッセージが書かれたメモがあった。

『いずれ全てを知るオレガノフの子たちへ』、その次のページをめくり最初に見た文字はレガーの継承という文字と下に書いてある文だった。


 『紫石(しせき)をもつ本来の力を封印されしオレガノフの唯一伝承者に家紋のガレアを伝承する。その力は共に成長し家紋に敵対する全てを排除するだろう。オレガノフの当主にしか許されないレガーは1人のみにしか許されず、共存できない力を正しき道へ』


 「難しい言葉だな。。ん?、次のページは何か。。紙じゃない?」


 次のページをめくると石で作られたようなページがあった。そのページを紙をめくるとそこには鍵穴のない南京錠が本と一体化していた。そこに手を伸ばすとシャックルが解除されるように鍵が空き。紫のレガーが吸収されるようにサルバの体に入った。


 「うああ!!」


 暑い血液が心臓から新たに作られ、全身の体で詰まっていた血管を溶かすかのように流れていく。同時に体の至る所から激痛を感じてサルバは気を一瞬失った。


 「ピッ!」


 アポの声の直後すぐに起き上がったサルバは明らかにいままでと違う体のざわめきを感じた。そのまま外に出たサルバは父のお墓の前に立って手を伸ばしてて溢れ出る力に身を任せた。最初レガーに覚醒すると自然と自分のガレアの個性に気づくことができるのでサルバは自分の力が何かを知っていた。それと同時にもう一つの力を感じていた。この何かが神からの力であり、どのようなものか本能的に理解できた。


 『テレキネシス』


 父の件が地面から抜かれて舞待っていた。指揮者のように剣を操作したあと剣を元の位置に戻した。以前よりもずっと強いパワーで剣は地面に刺さって振動で震えていた。父の重力とは違う念動力それがサルバのガレアの個性。『未分類の個性』アンカテであった。


 『クリエイション』


 目の色が金色に光った。地面から拳程度の石が出てきた。何もないところで物質を想像する力は神の領域の力である。その後念動力で石を剣の形に変更させて空に飛ばしていた時、全身に力が抜ける気がした。力を失って空中で剣が落ちてきて見学していたアポの目の前に落ちた。


 「ピーッ!!」


 「なんだ、、手に力が入らない」


 レガーの力を感じるようになってすぐの少年は力の運用も力もまだ微力であったのだ。しかし、覚醒と同時に二つの違う力を使いこなすサルバの能力は今の世界の基準からは大きくずれているものであった。


 「やばい、力が使えない!これがきっとレガー切れなんだな。特にクリエイションはずっと力を吸われる感覚だった。。でも。。これが俺の力か!いずれ使いこなして世界を再創造するための力としてやる!」


 そういうとサルバはその場で寝落ちをした。朝から続いた一連のイベントが落ち着いたタイミングで全身の力が抜けて少年の顔に戻っていた。アポも今回は起こさずに地面で寝ているサルバに体をそっと寄せで寝た。少し離れた場所で美味しそうな燻製の香りが漂っていた。


 3時間程度経っただろうか。空は少しだけ暗くなってきていた。サルバが起き上がった。


 「もう暗くなってきた、、あっ!燻製は?」


 そう言って走っていき燻製の状態を確認したサルバは満足気に笑っては燻製を一つずつ持ち運びできるように葉っぱで包んで部屋に戻り鞄に入れた。そして、旅に出るための準備をしはじめた。


 「よし、お父さんのネックレスとお母さんの写真とあの本と服と。。ゴード(お金)と燻製と。。地図と。。あとはなんとか現地で手に入れればいいだろう!!よし!アポ準備できた?!」


 「ピーピー」


 得意気にレガーの結晶を小さいカバンに入れて背負って上機嫌にサルバの方を見ていた。


 「じゃあ、いくか。。!」


 そして父とオハンの墓の前に立った。


 「お父さん、そこでみていてね、お父さんをこんなにした今の世界を俺が変えてみせるから。みんなが笑える世界が出来たらまた戻るよ。きっとまた会えるからいつになるかわからないけど。。やると言ったらやる!行ってきます!」


 そう言い終えるとサルバは再度目を金色に光らせ花の形をした石を作りオハンの剣の横に置いた。


 ここからついに世界を再創造する旅が始まったのだ。


■□■□■

<世界観情報> *この時点公開可能なものに限る


①ゴード : レテギニアで使用している共通通貨。1ゴードでおむすび一つ。100ゴードで旅館で一泊程度の金額になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

創造のサルバ 未知 袖 @kimung2124

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ