番外編、ハンナの日常1
あたしはフォルド王国人のお父さんと異世界人のお母さんとの間に生まれた。
お母さんはあたしや妹のフィオナみたいな子を「はーふ」と言うのだと、教えてくれたけど。実は、お父さんが護衛をしている陛下(お名前はアルフレッド様と言うの)の弟さんが同じ感じだとも聞いた。お名前がラウル様と言ったかな。父君が先代の王様で、母君は異世界から来た方なんだとか。
ちなみに、ラウル様の父君はイアン陛下とおっしゃって。母君はスズコ様とおっしゃったかな。
あ、お母さんとスズコ様は同郷らしい。確か、島国のニホンという国から来たとか聞いたなあ。んで、何と驚くべき事に陛下の息子さんのエリック王太子もお母さん達と同郷の方が前世なんだって。おかげでお母さん、スズコ様、王太子殿下の三人は意気投合していた。あたし、羨ましかったのは否定できなかった。
「お姉ちゃん、今日もお父さんは仕事だね」
「本当だね」
「お母さんも王宮で王子殿下のお話相手になっているしねえ」
あたしは頷いた。フィオナはちょっと、不満そうだ。あたしは今年で十四歳、フィオナも十二歳になっている。
お父さんが四十歳でお母さんは同い年くらいとだけ、言っておく。もし、年齢をはっきり言っちゃったら。大目玉だしなあ。ぶるりと震え上がった。
「お姉ちゃん、寒いの?」
「え、ちょっと寒いかな。でも、大丈夫だよ」
「大丈夫なわけないじゃない、ちょっと待ってて!」
「フィオナ?!」
あたしが妹を呼び止めようとしたけど。先に行ってしまう。仕方ないかと思ったのだった。
後でフィオナはもう、季節が冬だからと毛糸織りのカーディガンを持って来た。あたしは大丈夫だと言ったところでこの子は聞かないだろう。さすがに妹の性格は分かっていた。有り難く、受け取り羽織る。
「お姉ちゃん、さ。もう夕方だから、お部屋に行こう」
「分かった、行こう。けど、湯浴みをしないとね」
「あ、そうだったよ。湯浴みを忘れてた」
フィオナは今になって思い出したらしい。あたしが言って、やっとだわ。また、ため息が出そうなのを我慢した。
「じゃあ、お母さんがそろそろ帰ってくるはずだから。その間に着替えを用意しておこうよ」
「うん!」
二人で子供部屋に行き、着替えを取りに行った。
お母さんが王宮から、帰って来た。
二人で玄関まで迎えに行く。馬車にお母さんは乗って王宮と家を往復している。ちなみに、この馬車はお父さんの実家から借りていると聞いた。
「お帰りなさい、お母さん!」
「ただいま、フィオナ。ハンナも」
「うん、お帰りなさい」
フィオナが駆け寄ってお母さんに抱きつく。あたしは一歩遅れて、声を掛ける。お母さんは「寒くなったわね」と言いながら、玄関から家の中に入った。
湯浴みをまずはお母さんがフィオナと一緒に、あたしが二番風呂になる。ちなみに、一番風呂とかの言い方もお母さん仕込みだ。上がるとあたしは六歳の時から、通っている王立学園の課題をやりに行く。今は四つの科目の課題があり、十日後が提出日になっていた。
子供部屋の隣にある勉強部屋に行き、教科書やノートに参考書などを机に置いた。椅子を引いて座ると、課題を始める。集中したのだった。
二時間近くが経ち、やっと二つの科目の課題が終わる。残りは明日かな。そう思いながら、欠伸をした。
背伸びもしたら、ドアがノックされる。
「ハンナ、もう夜も遅いぞ。そろそろ、寝なさい」
「お父さん!はあい」
「ちょっと、仕事が立て込んでいてな。帰るのが遅くなったんだ、すまんな」
「ううん、あたしは気にしてないから。お帰りなさい!」
「ああ、ただいま」
開けて入ってきたのはお父さんだった。にっこりと笑いながら、答えてはくれる。
「……それよりも、ハンナ。本当に夜中に近いから、寝なさい。風邪を引くぞ」
「はい、分かった。おやすみなさい」
「うん、じゃあ。父さんも適当に食べたら湯浴みをするよ。おやすみ」
お父さんはあたしの頭をくしゃりと撫でてから、勉強部屋を出ていった。あたしは子供部屋に戻ったのだった。
はつふゆ 入江 涼子 @irie05
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