オンライン彼女

むらた(獅堂平)

オンライン彼女

 僕はインターネット上で彼女ができた。SNSで出会い、ダイレクトメッセージで告白をした。

 普段のやりとりは勿論チャットアプリだ。人見知りかつ対面で話すことが苦手な僕にはちょうどよい。


桜:元気―?

僕:ああ、元気だよ


 さくらが僕のオンライン彼女だ。いつも優しく気遣ってくれる。


僕;今日は天気が悪くて寒いね

桜:うん。西高東低らしいね

僕:性交童貞?

桜:だ、だれが童貞や!

僕:ごめんごめん


 桜は下ネタにも付き合ってくれるノリのいい女の子だ。


桜:あ、そうそう

僕:うん?

桜:可愛いワンピ見つけたから、買っちゃったハート

僕:よかったね

桜:画像アップするから、みてみて~


 チャットアプリで画像が添付された。白のワンピースで可愛いレースが施されている。


僕:あれ、着ている画像じゃなかった

桜:ごめん。後で送るね

僕:想像できるからいいよ。可愛いね。似合うと思う

桜:えへへ。ありがとう

僕:ちょっと離席


 僕はキッチンに行き、コーヒーカップにインスタントの粉を入れた。魔法瓶に保存されたお湯を注ぐ。

 まだ温かいので、同居人が沸かしてくれたようだ。


僕:お待たせ

桜:おかえり

僕:コーヒー淹れてた

桜:インスタントだね

僕:なんでわかった? エスパーか

桜:それはわかるでしょwこんな短時間で戻ってきたんだから

僕:まあ、そうか

桜:ねえねえ。次はどこ行く?

僕:最近のネトゲ飽きたなあ

桜:もうっ

僕:なに?

桜:なんでもありませーん

僕:そういえば、アマ〇ンの欲しいものリスト見たよ

桜:うん?

僕:買ったよ。桜の欲しがっていたもの

桜:本当? ありがとう! どれかなー

僕:リストにあるどれかだよ。お楽しみに

桜:やったー

僕:昨日注文したから、今日届くかな


 ピンポーンと玄関の呼び出し音が鳴った。僕は人見知りなので出ることはしない。

「はーい」

 代わりに同居人が出てくれたようだ。


僕:そういえば、例の件、どうなった?


 数分間、チャットの返信が桜から来なかった。


桜:あ、ごめん。席外していた

僕:いいよ

桜:例の件て何?

僕:ほら、会社の上司のセクハラ

桜:ああ。それなら解決したよ

僕:え、そうなの?

桜:うん。会社のお局さんが、頑張ってくれて

僕:へー

桜:お局さんって、いい年して男性に鼻にかかった声出すから好きじゃなかったんだけど

僕:うん

桜:何故か今回は私のために動いてくれた

僕:それも好感度とるためじゃないの?

桜:一応、私を助けてくれた人だから、悪く言わないで(笑)

僕:まあ、なんにせよ、よかった

桜:うん


 僕は両手をあげて伸びをした。生欠伸がでた。お腹も空いてきた


桜:お腹空いてきた?

僕:うん


 トントン。ドアをノックする音が聞こえた、僕は無視をして、チャットを打ち続ける。


僕;今日は久しぶりにピーマンの肉詰め食べたいな


「ねえ」

 女が部屋に入ってきた。僕は無視する。


僕;残った具材はハンバーグだな


「ねえってば」

 女は僕の横にきて肩を揺すっている。無視する。


僕:ああ。お腹空いた


「おーい。もういい加減、話そうよ」

 僕はなおも肩を揺すられていた。チャット上の彼女からは返信がない。


僕:ごめん。ちゃっとで


「ねえってば! チャット上じゃなくて、ご飯の相談くらいリアルでしようよ!」

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オンライン彼女 むらた(獅堂平) @murata55

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