第2話

「よっしゃああああ朝やーーーーっ! しかも晴れたーーーーっ!!!!」

「こら! 静かにせんかい!」


 痛っ!

 お母ちゃんにポカンって叩かれた。で。って昭和のアニメかい!


「もう! あんたって子は朝っぱらから叫んで……。てゆうか、夜中も叫んどったやろ!? 何なん? ときどき、とり憑かれたように山に向かって〝生きてーーっ!〟て叫び出すやろ? あれは何でなん? 何があんたをそうさせてんの?」

「んーー……。分からん。急にやりたくなるんよ」

「は?」

「昨日の夜、雨やったやん? 自分でも不思議なんやけど……最近な、夜中に雨が降ってたらな、だんだん雨が涙に見えてくるんや。雨の音が、誰かの泣き声に聞こえてくる。そしたら、こう、何てゆうか……めちゃくちゃ大きな声で伝えたくなるねん! 生きろーーって!」

「どういうことやねん……」


 お母ちゃんは呆れたみたいにため息を吐いた。


「ここはド田舎やし、近所に家も建ってないけど……。父ちゃんがビックリするやろ。あんたの奇声に飛び起きて〝何事やーーっ!? 我が娘よ、今助けに行くでーーっ!〟って暗い廊下を走って、壁に頭ドーンぶつけて気絶したんやで」

「え、それはホンマにごめんなさい」

「父ちゃん本人に謝りなさい。……まったく、こんな感じで、都会の会社でやっていけるんかいな。荷物の準備は進んでるの? 引越し先のアパート、決まったんやろ?」

「大丈夫や! 心配せんでも、うちは地元でも有名な晴れ女! 青い空のように明るく清々しく、のびやかにやっていくで!」

「今のくだりで晴れ女は関係ないやろ……」


 冬が終わって春になれば、新しい生活が始まる。

 めっちゃ楽しみやなぁ。

 あ、アパートの隣人さんにお土産買って行かんと。

 どんな人が住んでるんやろ?


 友達になれたらええなぁ。

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幻を聴く 麻井 舞 @mato20200215

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