わたしの死亡記事

第1話 追悼

　作家でエッセイストの藤光（とうこう）氏（5x）が死去していたことが◯日、分かった。

　◯月△日午後、訪ねてきた友人が自宅の居間で白骨死体を発見、同時に同氏が行方不明であることが明らかとなる事件が発生。地元警察が行方を捜索していたが、◯日、発見された白骨のDNA型が同氏のものと一致するとの鑑定結果が発表され、同氏の死亡が確認された。死因は不詳。自宅に遺書等はなかった。

　藤光氏は、197x年、兵庫県生まれ。三流私立大学法学部卒業後、地方公務員として兵庫県の出先機関で30年余り勤務した。高校在学中の198ｘ年ごろから、アニメ『風の谷のナウシカ』の二次創作小説やコンピュータＲＰＧの世界観を用いたファンタジー小説の執筆をはじめる。大学卒業を機にいったん創作活動から距離を置いたものの、結婚そして長男の誕生を経て創作意欲を取り戻し、2015年秋、小説の執筆を再開した。

　2016年６月、同年２月に稼働をはじめた小説投稿サイト「カクヨム」にＳＦ小説「盗まれた日曜日」を発表。以後、同サイトを中心に数多くの小説、エッセイ、短歌等を執筆して人気を博した。得意としたジャンルは、ＳＦ、ファンタジー、時代小説で、これらの短編小説に良作が多い。また、ネット作家としての身辺雑記をつづったエッセイの連載は、４年余りにも及んだ。

　代表作は、小説「わたしの欠片」、「青海剣客伝」。エッセイ「いつもストック・ゼロ日記」。自選歌集として「いまはまだ『無題歌集』」がある。

　なお、告別式はすでに近親者で済ませているところ、後日、カクヨム運営主催による「お別れの会」が開かれる予定。

（令和５年〇月〇日　毎日朝読新聞社会面より抜粋）　

※　こちらのエッセイと連動しています。

https://kakuyomu.jp/works/16817330654109512222/episodes/16817330666707847087