アイン先生の冒険者授業 2話 初めての授業

トトスの村に住む冒険者見習い用の教官であるアインを主人公にした物語です。

声劇台本として使える様にしておりますので良かったらどうぞ。


このシリーズの台本を使って劇をするのは大丈夫なのですが、もし企画劇等に使いたい場合は私のツイッター等からご連絡をお願いします。

つたない所もあるでしょうが楽しんでいただけると幸いです。




声劇台本


アイン先生の冒険者授業 2話 初めての授業

20分台本です。



アイン


冒険者学校の教官をしており28歳の男性。

童顔優男で冒険者としては器用貧乏。

メガネをかけており、栗色の髪をしている。

性格は八方美人。




ダイス


16歳の男の子。若干短絡的だが元気で優しい男の子。

冒険者見習いを目指す3人組のムードメーカー。

近接戦闘ができる様になりたい。




クレア


16歳の女の子。元気ではあるが基本的には落ち着いているしっかり者。

好奇心旺盛で食いしん坊。ややメン食い。姉がいる。

杖と魔法を使いたい。母は治癒魔法を使えるので自分もと思っている。




ルージア


15歳の性別不明の子。大人しく、やや引っ込み思案。

自分に自信がない反面、二人の為に勉強を怠らない努力家な面も。

弓と魔法を使いたい。視野が広い。



下記は時間の単位。


アウナ 時間

ミネット 分

セク   秒






3人のセリフはバラバラでも大丈夫です。お任せします。


役表


アイン 不問:


クレア 不問:


ダイス 不問:


ルージア 不問:



↓本編ここから

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ダイス :なーアイン、今日は授業じゃ無かったのか?武器とか魔法についての指導って言ってたのに。




クレア :ふわぁ・・・私、まだ眠いわ・・・。朝告げ鳥が泣いてから1アウナしか経ってないのよ・・・。こんな時間に森歩きなんて・・・そもそも、まともに村の外の森に入ったの初めてかも・・・。




ルージア:木々自体はそんなに密集してるわけじゃないのに、こんなに薄暗いんですね・・・。ほら、二人とも。村の外なんだから、しっかりしよう?




アイン :ごめんよ、3人とも。この時間と、このタイミングじゃなきゃダメだったんだ。




ダイス :そうなのか・・・授業で使う薬草採取とかにでも行くのか?薬草採取は人数居るとはかどるって言うし、喜んで手伝うぜ。




クレア :私、眠いからあんまり戦力にならないかもー。




ルージア:レア、いい加減しゃきっとしてよぅ・・・先生の事だから、きっと大事な事だと思うよ?ほら、水筒持ってきたから、顔もう一回洗おう?ね?




クレア :ルー、アンタ本当にいいやつね・・・ふわぁ・・・。私がもらってあげてもいいわよー・・・ふわあああぁ・・・。




ルージア:それ、ボクが毎朝起こしてご飯作って、全部面倒みさせられるやつだよね・・・。もうーっ!




ダイス :レアの面倒全部か・・・大変なんだろうな・・・しみじみと想像ができるぜ・・・う、うぅ・・・っ。(ウソ泣き)




アイン :3人共、もう3ミネット程歩けば目的地に着くよ。




ダイス :ほいほい、ほらレアいい加減起きろ、って!(背中をべしん)




クレア :きゃあっ!?ちょっとダイ!女の子にはもっと丁寧にしなさいよ!!




ダイス :力なんて全然込めてないぞ?アインが困るだろうから言ってるんだぜ?




クレア :そういう問題じゃないの!力の加減とかじゃなくて、女の子にする事じゃないって言ってんのよっ。




ダイス :む、そうか、そりゃそうだな。すまん、悪かった。




クレア :まったく・・・。




ルージア:ところで先生、本当に今日は何をするんですか?




アイン :うん、もう着いたからすぐわかるよ。




ダイス :え?ここが目的地なのか?




クレア :・・・えっと、何もないんだけど。草と木に囲まれてるだけで花とか薬草になりそうな物なんて全然無いわよ?




ルージア:あの・・・先生・・・?




アイン :うん、これも3人の授業の一環だよ。さ、これを持って。




ダイス :うお、なんだこの棒!?って、先生、そのポーチ、マジック収納だったのか!!?




クレア :ちょっと!?何でも入るって噂の!!?冒険者の憧れの品じゃない!!!!




ルージア:こうして実際に見るとものすごく便利ですね・・・ボクも欲しいです。




アイン :3人も冒険者をする内に、きっと手に入るよ。さて・・・。




3人  :先生?




アイン :これから授業を始めるよ、3人共。はい、ルージアには弓だ。




ダイス :・・・え?こんな場所でか?




クレア :・・・・・・ちょっと、この棒って・・・多分槍よね?・・・ちょっと待って。




ルージア:もしかして・・・先生・・・?




アイン :そう、そのもしかして、だよ。




ダイス :えっと・・・え?これから魔獣と戦うのか?




クレア :ちょっと!?私達、何の授業も受けてないのよ!絶対無理よ!!!




ルージア:先生、レアの言う通りだと思います・・・何の知識も技術も持っていないボク達が魔獣といきなり戦って勝てるわけないですよ・・・。




アイン :君達の言い分はわかる。気持ちも含めて、俺が3人に無茶を強いているのは理解しているつもりだよ。




ルージア:なら・・・先生、今のボク達には出来ないって事はわかっているんですよね。こ、こんなの・・・ひどいと思います。




アイン :ルージアも、ダイスも、クレアも聞いてくれ。今から話すのはとても大事な事だ、俺は今だからこそ、君たちに教えたい事があるんだ。




ダイス :・・・ルー、レア、とりあえず聞いてみようぜ。アインは誰かに理不尽な事を理由なく、したりはしない・・・と思う。




クレア :・・・わかったわ。




ルージア:・・・・・・。




アイン :ありがとう、ダイ、レア、ルー。




ダイス :いいよ、まずは話してくれ、アイン先生。




アイン :まず、君たちはこれから先、冒険者をする事で生計を立てて行く。これは3人共、合意の上で覚悟をして決めたことだよね?




ダイス :あぁ、そうだ。魔獣達が危ないって事も・・・冒険者見習いになる前にある程度は調べたつもりだ。実際に人にも聞いてきた。




アイン :その時、君達3人はどう思ったんだい?




ダイス :そりゃ・・・怖いって、思ったよ。人型人種並みに頭が良いって聞いたし・・・。




クレア :えぇ、母さんは魔獣は怖いって言ってたわ。魔獣を怖いと思った事が無い人はいないって。




ルージア:・・・・・・。




アイン :ルージア、君は?




ルージア:・・・・・・・・・。




アイン :君の気持ちもきちんと聞いておきたい。だから、俺を先生だと思ってくれているなら、答えて欲しい。




ルージア:・・・その聞き方はずるいですよ。




アイン :ごめん、ルージア。ずるいのはわかっているんだ、でも大事な事だから、聞いておきたいし、話もしたい。




ルージア:わかりました・・・。えっと・・・ダイスが言ってた通り、魔獣は人型人種並みに頭が良くて・・・その、人を騙す事や殺す事に全く躊躇がないって・・・。

見習い冒険者の死亡率が、教官が来る前は70%だったって言う事も。




アイン :・・・そうか。君はとても覚悟をして、たくさんの事を調べたんだね。

死亡率が70%だった頃の記録は秘匿されていて、今では知りえない情報なんだ。




ルージア:15年前に冒険者をしていた父の友人が、ボクが冒険者をすると聞いて教えてくれたんです。・・・詳しい事は教えてくれませんでしたが。




アイン :・・・その友人の方は正しいよ。70%という数字が出た時に、俺達冒険者やギルド員達に秘匿命令が出たんだ。魔獣を狩る人達が減る事に、国は危機感を覚えたんだろうね。




ルージア:・・・ボクも、そう考えていました。




ダイス :ルージア・・・お前、俺はそんな話聞いてないぞ!




クレア :ダイス!!・・・待ちなさいよ。ルーが大好きな私達の為に悩んで、簡単に言えなかったなんて、考えればすぐわかる事じゃない。




ダイス :でも!!!!ッ・・・命に係わる事なんだぞ?




クレア :私だって、ルーに思う所はあるわ。でも、大事だからこそ言えない事もあるわ。ルー、私は悲しい気持ちも嬉しい気持ちも両方あるわ。・・・だから、次からはこういう大事な事は話してね?




ルージア:ごめん・・・。本当に、ごめん・・・ごめんよ、二人とも・・・。




ダイス :・・・ごめん、ルー。俺も、無神経だった・・・本当に悪いと思ってる。

・・・俺自身にも負担だろうって思わせる弱さがあったのかもしれない。・・・俺も安心して話してもらえる様な強さを身に着けるよ。・・・本当にごめんな。




ルージア:ダイ!そんな事、ない!そんな事ないよ!!!言えなかったのはボクの心が弱かったから、心のどこかで二人を疑う気持ちがあったからなんだ!




クレア :二人は悪くないわ・・・二人の事を一番知ってる私にだって大きい責任があるもの!




ダイス :おい待てレア、一番知ってるのは俺だから、俺が悪いに決まってる!




ルージア:待ってよっ、二人とも落ち着いて。この話は、そもそも2人の事を_____。




アイン :そこまでだよ。




3人  :先生・・・。




アイン :連れてきた俺が言う事ではないけど、ここは魔獣の住処だからね。まずは声を抑えようか。・・・ごめん。まずは3人に謝らせてほしい、俺は、君達3人を見くびっていたみたいだ。




ダイス :えっと・・・。




クレア :どういう事?




アイン :まずは、俺が君達3人を突然、ここで魔獣と戦わせようとしたのは、危機感を持ってもらう為なんだ。




ルージア:危機感、ですか?




アイン :そう、危機感だ。実際、魔獣の事をとても勉強して見習いになろうとする子達は多い。けれど、実際には勉強で得られる事は情報でしか無いんだ。




ダイス :情報・・・ええと・・・実際には戦った事が無いって事か?




アイン :そうだね。情報と実感の違いは事実としてとても深い溝なんだ。




クレア :それは・・・先生の雰囲気とか、ルージアの言葉で・・・想像だけど、なんとなくわかったわ。でも、何で今のタイミングなの?




アイン :それは、ひどい事だとは思う、けれどもね。恐怖と言う物がどういう事か、知ってほしかったんだ。




ダイス :・・・なぁ、アイン。よくわからないんだが・・・、何で恐怖を知った方がいいんだ?恐怖なんて、身体がすくんじまうような事だろ?・・・なんでそんな物を。




アイン :ダイス、恐怖を知らない冒険者がどうなるか、考えてごらん?




ダイス :え、あ?え?えーっと・・・。体は動くからスムーズに魔獣を倒せる・・・とかか?




アイン :あぁ、そうなるね。




クレア :えーっと・・・魔獣は倒せた方が良いんじゃない?村や街、近隣の住民の危険は減るじゃない。




ルージア:・・・そうか。そういう事だったんですね・・・。




ダイス :どういう事なんだ?




クレア :よくわからないわ、ルー、教えてもらえる?




ルージア:うん、えっとね。恐怖を知らない冒険者がモンスターを倒す、それだと脅威を取り除ける、色々な人が助かる。そこはさっき話した通りだよね。




ダイス :あぁ、大事な事だよな。




クレア :えぇ、その通りね。




ルージア:もし、恐怖を知らない冒険者が恐怖を覚えるような魔獣と出会ってしまったらどうなると思う?




ダイス :え?あ・・・えっと、パニックを起こす・・・のか?




クレア :・・・なるほど、そういう事だったのね。




ダイス :? ? どういう事なんだ?




クレア :ダイ、あんた本当頭の巡りが悪いわね・・・つまりね、こういう事よ。

恐怖を知らない冒険者は色んなモンスターと危機感を覚えないままにどんどんと戦う。そうなるとどんどん自信を付けていくでしょ。




ダイス :あぁ、そうだな・・・。自信がついたらもっと強い奴と戦いたくなるよな、腕試しもしたくなるし・・・。って、ああああああ!!!!




ルージア:ダイ、そういう事なんだ。下手に魔獣に勝つことで自信をつけた冒険者はどんどん強い魔獣と戦うことになる。その末路がきっと・・・勝てないモンスターに挑んでパニックを起こして・・・死ぬ。




ダイス :そういう事だったのか・・・全然わからなかったよ。ルー、お前が居ないとやっぱり俺とレアはダメだ。




クレア :ちょっと、私とダイは気づいたタイミングが違うわよ?・・・でも、私もやっぱり、ルーが居ると心強いわ。




アイン :わかってくれたみたいで良かったよ。・・・でも、この話の振り方は俺が間違っていたと思う。




ルージア:先生?




アイン :君達なら、事前に話を通したとしても、理解してくれたと思ったんだ。本当に互いを大事に思っている君達なら、互いの為にいくらだって努力を出来たはずだ。そこを、俺はみくびって話を通そうとしなかった・・・。本当に、すまなかった。この通りだ、反省している。




3人  :先生!?




アイン :君達の友情や君達自身を侮っていたんだ。本当にごめん、許してほしい。




ルージア:先生!顔を上げてください!!先生はひとかけらだって悪い事なんて無いです!!




クレア :そうよ!私達だって、事前に話を通してもらったって本当に理解できたかなんてわからないじゃないっ!




ダイス :・・・何より、アインは・・・いや、先生は俺達の生存を願って言ってくれたって事は、馬鹿な俺にだってわかる。・・・アイン、俺は。いや俺達はアインに感謝しか無いよ。だから、謝らないでくれ。




アイン :3人共・・・。




クレア :先生、気を取り直しましょ、私達、この事で本当に先生の事が好きになったわっ。




ルージア:はい、ボクも先生の事が大好きになりました。本当に、会って間もないボク達の事を心配してくれたんだって、すごく伝わりました。




ダイス :アイン・・・ありがとうな!俺達の事、よろしく頼む!




アイン :ダイ・・・皆。ありがとう、俺に教えられることは全て教えると誓うよ。君達は、絶対に俺が守る。




クレア :やだ、アインかっこいい・・・!こんなの惚れてまうやろ、よ!




ダイス :レア!?お前、何言ってんの!!!?




ルージア:ちょっと!二人とも、声が大きすぎるよ!!!




アイン :あちゃぁー・・・嬉しいやら、複雑やらで・・・ふふふ。3人共、魔獣が近づいてきてるよ、さあ、武器を構えるんだ。




ダイス :ま、まじかよ・・・!レア、お前が変な事言うからだぞ!!




クレア :ちょっと!私だけのせいにしないでよ!!紳士的で恰好良いアインが悪いのよ!




ルージア:2人とも落ち着いてよ!初の実戦がこんなのだなんて!!せっかく先生が良い機会をくれたのに・・・!!




アイン :まずは落ち着こうか、3人共、深呼吸をして、ね?




ダイス :わ、わかった・・・すぅぅ・・・はぁぁ・・・。




クレア :こんな時に深呼吸って・・・ふふふ、まったく。すぅー・・・はぁー・・・。




ルージア:わかりました、先生。スー・・・ハー・・・。




アイン :よし、落ち着いたようだね。ダイス、君は大剣志望だから前衛だ。前に出て敵の目を引いて相手を二人から遠ざけるんだ。

クレア、君は中衛でルージアを槍で守りつつ、出来るなら魔法で回復を行うんだ、覚えたてでも良い、効果が無くてもいい、使う事が重要だ。そして深追いはしない事。

そしてルージア、君はパーティーの目になれる様、後衛を担当してほしい。不意打ちを行う敵を見つけて牽制をしたり、真っ先に仕留める事。

増援が来た時には伝える努力をすれば大丈夫だ。出来なくてもいい、まずは一生懸命やろうって気持ちを起こしてあげよう。




アイン :我が愛しき精霊よ、共に生きる友誼を結びし者たちへ、その堅牢たる生命の盾を宿らせたまえ!ライフズシール!!

痛みを軽減する魔法をかけたよ、痛みはそんなにはないはずだ。存分に恐怖を感じてくれ。

君達が空けた穴は俺が全部埋める。だから3人は思う存分に怖がって、失敗をしてくれ。



     

3人  : わかったぜ!!!

      わかったわ!

      わかりました・・・!



(続きます)



気が向いた時に続きを書きます。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

これは自作小説「お金が無いッ!!人生迷子の少年、迷子のエルフと出会う」の外伝です。

良かったら本編も合わせて楽しんでいただけると幸いです。



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お金が無いッ!外伝 声劇台本シリーズ 些名柄ぱんだ @racturis

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