第2話 キュリオス編

 それでは、シルク・ドゥ・ソレイユの日本公演『KURIOS(キュリオス)』の話を始めよう。ようこそ、非日常へ。


 キュリオスの日本語版の公式サイトなどはもうすでに無くなっているっぽいので、見に行ったことのない方は英語版の公式サイトや公式Youtubeなどをご覧になることをお勧めする。ちなみにサイトによると、現在(2023.12)もキュリオスの演目は世界を巡業中らしい。


 当時座っていた観客席は正面から見て左のド側面、そして前から数列目であった。ちなみに値段がめちゃくちゃ安い席である。


 キュリオスを題材にした当時のブログなどを見ていると、キュリオスは開演前に演者の方がうろうろするタイプの演目だったらしい。


 そして私が見た公演も例外ではなく、飛行艇乗り風の衣装を着た演者が開演前にうろちょろしていた。(うろ覚えであるが、サイトを確認したところ多分Rola Bolaというキャラクターだと思われる)


 舞台左端に建っている塔の上に座っていて、何やら楽しそうに一人遊びをしている。


 まわりの観客たちに影響されて、飛行艇乗りの人を観察したり、ぎこちなく手を振ったりしていた。

 すると、なんとその人がこちら一帯に向けて手を振ってくれたのである! 


 いわゆるファンサである。


 その時はまだファンというほどではなかったが、たとえ自分に向けたものでなくても、舞台上からのアンサーが来るのはすごいなあと思ったのだ。



 ファンサの話だけで五百文字近くなってしまった。このままでは全然進まないので、キュリオスで私の好きな演目の話をしよう。


 当時パンフレットを買わなかったので正式な名前は分からないが、椅子の演目が好きだ。


 細長いディナーテーブルに椅子などを高く積み上げていって、それに登るというシンプルながらも不安定な演目である。そして、高く積み上げると同時に、暗い天井からも椅子を積むようにして逆さまに吊り下げる。


 天井が床で、床が天井。


 それを見て、重力無視しているのか!? と思ってしまったほどだ。まるで中央に鏡があるように対称に積まれていく姿に、私は非日常を感じたのだ。


 他にも自転車の演目や、手の影遊びのような演目(側面の座席なので何をしているのか全く見えなかった)など、サーカスの枠を超えた挑戦的な演目が行われた。


 もちろんサーカスといえば挙げられるだろうジャグリングもあるし、トランポリンのような網を使った演目もある。

 十九世紀産業革命を舞台にしているため、舞台上はレトロな雰囲気に包まれている。


 キュリオスは、古くもあり、新しくもある演目なのだ。


 ◆


 そして、キュリオスは舞台芸術や衣装も素晴らしいのである。演者が身につけているのはスチームパンク風の衣装や小物であり、それぞれ衣装が違うため、目が足りない。


 もちろん私はスチームパンク的世界観も好きであるため、皆ちょっと止まって全身のスケッチをさせてくれ! と思いつつそれは無理なので、公演の様子を目に焼き付けようと必死だった。


 このような細かい部分まで素晴らしい舞台芸術を見ると、やはり細部こそクオリティに関わってくる部分なのかもしれないと思う。



 キュリオスは音楽も良い。生演奏であり、生歌である。軽やかで楽しげで

、どこかレトロな曲中心なので観客もノリやすい。


 キュリオスの曲で特に私の好きなものは、「STEAMPUNK TELEGRAM」と「WAT U NO WEN」と「YOU MUST BE JOKING」だ。どの曲も良いので一つに絞りきれなかった。でも、やっぱり物語の始まりを予感させる「11:11」も好きだ。


 キュリオスの曲にあまりにも感動しすぎたため、私は終演後に思わずCDを買ってしまい、シルク・ドゥ・ソレイユの虜となった。公演が始まる前は何も買わないつもりだったのだが、悩んだあげく買うことに決めたのだった。


 あれから四、五年経った現在もCDを毎日のように聴いているため、買って正解だったなと実感している。



 キュリオスについてつらつらと書いてはみたものの、百聞は一見にしかず、だ。私の言葉では語りきれなかったことが沢山ある。あれから四、五年も経ってしまったため、記憶も曖昧になっている。どうか機会があれば、キュリオスをその目で見て欲しい。私も、できればもう一度見たい。


 次回は今年日本公演が行われた『ALEGRIA(アレグリア)』について話そう。歓喜の王国へ行こうではないか。





 

 

 

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