呪いとデジタル。
ホラーとSF。
一見、調和しないようですが。
僕らの住んでいる現代って、ある意味オカルトとSFが共存しているような世界なんだなぁって、思わされた読後感でした。
メンタルを削りながら、情報の海に溺れて。
どれが本当か分からない。
何を信じて良いか分からない。
これは何より、僕らのリアルだと感じてしまいます。
ぜひ注目して欲しいのは、各エピソードのタイトル。
読みながら、まるで富士の樹海
もしくは、ブラックホールの中、迷い込んだかのような錯覚を憶えます。
もう、この物語に身を委ねて。トリップしたら良いと思うんです。
トリップしたその先に、きっと光が視えるから。
そんな充足感に満ちたホラーでした。
本作は新しく開拓したホラー色のあるSFジャンルと言えましょうか。
ラストでは、ややSFよりで、心情をホラーにのせた印象が残りました。
まだまだ、未知の人工知能に想像力を加えて自由に羽ばたかせた作品です。
キャラクターの深みに入ると、作者様のメッセージがビリビリと届きました。
個人的な問題ですが、リアルで実の母が脳を欠損し、娘も何年も病におかれており、子として母として、じっくりと拝読したエピソードがございました。
本当に泣かされます。
作者様のこれまでの作品で、人間観察と言うものを感じることがございます。
生きているものは、どのような立場やものであれ、無ではないと訴えているように思えます。
一話の分量が読み易い量となっております。
会話文も今の言葉でいきいきとしており、見習いたい位です。
是非、ご一読ください。