第11話

「行ってらっしゃい、ルー」

「頑張れ、ルー!」

「ぶっ飛ばしていけよー!!」

「えへへ…行ってきます!」


エルフや魔人、獣人、そして人間…数多の種族が集まるのは、国立競技場である。

「エントリーNo.55のルー・ズンバです」

「…確認できました、奥へ向かってください」

「はい」

受付のエルフに指示された通り、奥へと向かう。

「よォ、ルー」

「?失礼、どちら様ですか?」

ムッ、とする青年。

「オレだよオレ!レイン・フィート!同じ孤児院の!!」

「…あぁ!レイン、久しぶり!ところで…後ろの人は?」

こちらを窺うようにチラチラ見てくる、角の生えた少年。

「コイツは和の国の…オレを引き取った義父さんの息子!」

「え、と…ぼ、僕…鬼神きじん一族の己鏡ききょう、だよ…」

「己鏡は一族の次期頭領なんだぜ!」

ニッ、と白い歯を見せて笑うレイン。

己鏡は、控えめに微笑んだ。

「レインが来てから、屋敷は賑やかだよ」

「お?そりゃあ良かった!」

《これより、入隊試験を始めます。各自、戦闘準備をしてください》

「「「!」」」

ごくり、と俺は唾を飲む。

いよいよ、始まる…!

《エントリーNo.45、エントリーNo.126は第1競技場に来てください》

「お、己鏡か!頑張れよ!!」

「う、うん…!」

たたた、と走る己鏡を見送り、俺達は観客席へと向かった。

会場は、物凄い熱気に包まれていた。

「己鏡ーー!!負けたら容赦しないからねーーー!!!!」

隣で物凄い声量を出す、見たことの無い服を着た女の子。

レインが、女の子に声を掛けた。

「於菊!」

「レイン!久しぶり〜!そちらの人は?」

「ルー・ズンバ、です…」

「私は九條宮於菊くじょうのみやおきく。和の国の人間だよ。2人も、己鏡を応援に?」

「おう!」

「うん」

《各自、準備は出来ましたか?それでは────レディ、ファイッ!》

カァーンッ、とゴングの音が響き渡る。

先に動いたのは、相手だった。

身体は、己鏡より何倍もでかい。

どんどん劣勢になる己鏡。

「己鏡、負けるんじゃ…」

思わず呟く。

「───それはないよ、ルー」

「え?」

きらり、と於菊の瞳が輝く。

「己鏡はね、ルー。追い込まれた分だけ、強くなる」

「それって、どういう…」

意味なの、と言い切る前に、会場が突然歓声に包まれた。

「えっ?」

己鏡達を見ると、優勢だった相手は倒れ、劣勢だった己鏡が立っていた。

しかも、己鏡は姿が変わっていた。

純黒の、肩位で切り揃えていた髪は真っ白、しかも腰まで伸びている。

角は真っ赤になり、先程よりも5センチほど伸びていた。

「……」

グイッ、と頬に付いた血を、荒々しく手の甲で拭う己鏡。

「え、え…?」

「己鏡は鬼神一族の中でも、特に神に近い存在。まさに、“産まれるべくして産まれた存在”なの」

「一族…いや、今までの鬼神の中で最も鬼神の始祖に近いんだ、己鏡は」

於菊、レインが説明をしてくれる。

間抜けな声が、口から出た。

《勝者───己鏡!!》

ワァァァァァッ!!!

大歓声に包まれる会場。

己鏡は、俺達に手をひらひらと振ってくれた。

《エントリーNo.55、エントリーNo.68は戦闘準備をしてください》

「あ、俺だ」

「ルー、行ってらっしゃい!」

「頑張れよ!!」

「嗚呼!」

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悪役令嬢に成りましたので悪役らしく過ごします 中太賢歩 @YAMI_SAKURA

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