最終話

「予定よりも早いわね?」

「まぁ、いろいろとありまして……」


主にオリビアお姉様に。


「私としてはサラと1秒でも一緒にいる時間が増えるから構わないわ」

「レ、レイチェル様……恥ずかしいです……」


フォンテーヌ侯爵家で開催されるお茶会には、学園でいつも一緒にいる皆さんが既にいらしていました。


「私たちのことはお構いなく」

「むしろもっと見せてくださいっ!」

「お菓子が進みますわぁ……」


みなさん、相変わらずですね……

お茶会はその後も和やかに進んでいった。


「皆様にお知らせがありますの」

「私たち、正式に婚約することになりました」


と友人のお二人が婚約するとこの場で発表がありました。

何でもレイチェル様とサラの様子を一緒に見るうちに意気投合したのだとか。

私?私には相手はいないわ。

だって私はモブ令嬢なんだもの。


「あの……エマ様」


と友人の一人の伯爵令嬢であるカーナ様が話しかけると、何かを手渡してきた。


「これ……」

「あの……この前の百合本見てから、二人のその後みたいな話考えて……でも私物語書くのとか難しくて、絵にしたらいいかな……って」


これ薄さ、間違いないわ。前世でいつも見てきた。


「同人誌じゃない!」

「ドウジンシ?」

「えっと、趣味で作った薄い本を売ったり買ったりする文化のことよ」


そういえば、こっちの世界に同人誌っていう言葉はまだないんだった。


「これは、エマ様にプレゼントします。もしよかったら読んでください」

「ありがとう!とても嬉しいわ。今度感想言いに行ってもいいかしら?」

「はい、是非っ!!」


やった!!


「あの、それと、私が考えた百合のシチュエーションがですね……」


こうして私の日常に、新たな楽しみが増えたのであった。

その後、私はカーナ様と親交を深め、同人誌は徐々に貴族平民問わず浸透していく。



そして念願の――



「コミケだーーーーー!!!」





『エマ・ミュラー』

世界に「百合」の概念を浸透させた彼女は、百合好きの間では『女神』と呼ばれるようになるのを彼女は知らない。

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悪役令嬢とヒロインをくっつけたいモブ令嬢の話 Ryo-k @zarubisu

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