究極の自動運転


「おいおい、ノブどうしたんだよ、その松葉杖まつばづえは?」


友人の大輔がノブこと、田上行信たのうえゆきのぶを心配そうに会うなりそう言ってきた。


「いやー、まいったよ、これじゃ約束していたドライブいけないな」


自分の足の怪我を自虐しながら大輔に、申し訳なさそうに伝えた。


「それはもういいよ、また怪我が治ってから行こうぜ!」


「それで、その大怪我の理由はなんだよ?」


「ああ、話は長くなるからさ、そこの喫茶店きっさてんでも行こうぜ?」


「構わないけど、その怪我じゃ、立ち話は酷だからな」


「ありがとう」


喫茶店に入ると店員さんが、


「いらっしゃいませー、お好きな席にどうぞ」


「よいしょっと」


大輔の手を借りて椅子に座った。


「どうも、ありがとう」


「ああ」


店員が、


「ご注文はお決まりですか?」


「ブレンドコーヒーで、大輔は?」


「俺もそれで」


「かしこまりました」


店員さんは、注文を受け取るなり厨房へ向かって歩いて行った。


「本題に入るけどさ、こないだ仕事のために車を買ったって言っていたでしょ?」


「そういや1万で中古車を買ったって言っていたな、あれマジだったのか!」


「その中古車がいわくつきだったんだよ」


「そりゃ、1万だから、事故車とかそんな代物じゃないのか?」


「いや、違うんだよ、お化けつきの車なんだよ」


「えっ!何それ」


驚いた表情の大輔。


ここで、頼んだコーヒーがきた。


「ご注文のブレンドコーヒー2つです」


店員が、それぞれ2人の前にコーヒーを置いた。


「ありがとうございます」


「どうも」


2人で、お礼を言いコーヒーをすする。


「はぁー、うまい」


「そうだな」



「んで、さっきの続きなんだが、最初買った時にさ、販売店から言われたのよ、この車は、いわくつきですが、いいですか?って」


「どうせ、俺も事故車とかそんな感じだろうと思ってOKしたのよ」


「それで?」


「買って後もしつこく本当にいいんですね?あとで何か言われても何も受け付けませんよって言うんだよ」


「俺も金がないから気にしなかったんだ、それで一昨日初めて運転したのよ、買い物に使ったんだけどさ」


「その時、事故ったのか?」


「いや、その時は何にも問題なかったからさ、安心していたのよ、問題は次の日だよ」


「会社の帰り道に疲れたから、後ろの席でちょっと仮眠してから自宅に帰ろうとしたのよ」



「寝ていたら、エンジンの音がしたから目が覚めたのよ、起きたら車が動いているんだよ、運転席みたら、見知らぬ男性が運転していたのよ」


「こわっ!」


「じっくり見たら顔の右側がぐちゃぐちゃで体も血だらけだったんだ」


「ヤバっ!怖すぎるよ」


「だから走っている車から飛び降りたら、ご覧の有り様ってことよ」


「やばい車だったんだな、その車な」


「そうなんだよ、だからさっき買った販売店に文句を言いに言ったよ」


「で?」


「そしたら、店長が最初に言ったでしょ!何も受け付けませんよって」


「それでもお化けが出るとは聞いていません!」


「それは、あなたが何も聞いて来なかったからですって言うのよ」


「そ、それはそうですけどあの車が一体なんなのか理由くらい教えてもらってもいいですか?って聞いたのよ」


「あの車の元の持ち主は、運転が好きな男性で、友人が運転しているときに事故に遭い自分が後部座席で亡くなったから、死ぬなら運転席で死にたかったと本人は思っているようで、誰かが後部座席に座っていて、運転手がいない時にだけ、化けてでて運転を勝手にするんです、みたいなこと言うからさ」


「そんなヤバい車を売るんじゃないよ!って言ってやったよ」


「そうしたら、もういいんです、どのみちこの店は明後日で廃業ですからと青ざめた顔でそう言ってたから、この店、呪われていると思って急いで、店から今、逃げてきたところなんだよ」


「ひぇー!大変だったな」


「でさ、俺が飛び降りたあと、俺は怪我したけど車は自然に路肩に止まって傷は一切ないのよ、だからさ、大輔、車欲しがっていたじゃん、いる?」


鍵を大輔に見せる。


「いるわけないだろう!そんな危ない車!」


「ですよねー」



終わり。


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