ホラー短編集〜日常に潜む怖い話〜
もっちゃん(元貴)
ゆでたまご
朝、通勤する途中に通る公園で、不思議な人を見かけた。
マスクをした初老の男性のように見えるけど、なんと後ろ向きで歩いているのだ。
新しい健康法なのかなと思いながら歩いていると、公園の時計が6時20分をさしていた。
「ヤバっ!30分に発着の電車にのらないと遅刻だ」
私の家は、山沿いの新興住宅街にあるため、駅まで遠いし、駅に行くバスも昔は本数がたくさんあったが今は1時間に1本しかなくなってしまった。
今日も、その1本に乗り遅れているのだ。
まぁ、最近は私もお腹が出てきたので、駅まで歩くことが多くなってきたが。
駅に向かって走り始めると、先ほどみた後ろ向きで歩いている男性を追い越した。
その男性の後頭部の髪の隙間にあるはずがない口が一瞬見えた気がしたのだ。
何かの見間違いだと思いながら駅に急いだ。
夕方、仕事終わりに、自宅の最寄り駅からバスに乗ろうと、バス停で待っていてもなかなかバスがこない。
時刻表を見てみたら次が1時間後になっている。
「げっ、マジかよ!」
電車が人身事故のため30分遅れていたため、通常だったらバスにすぐ乗れたのに。
「はぁ、仕方ない家まで歩くか」
駅から自宅に向かって歩き始めると、道端に何か白くて丸い物が落ちているのに気がついた。
落ちている物に近づくとまるで、ゆでたまごのように見える。
なんでこんなところに、ゆでたまごが!と思い拾い上げてみた。
案の定触った感じもゆでたまごで、ぷにぷにしている。
そのゆでたまごの裏を見てみたら
「うわぁぁーー!」
思わず大きい声を上げてしまい、ゆでたまごらしき物も放り投げて、道端に尻餅をついてしまった。
後ろから、男性の声が聞こえてきた。
「大丈夫ですか?」
「はい、ちょっと落ちていた物に驚いてしまって」
振り返って、声をかけてきた男性を見ると朝、見かけた後ろ向きで歩いていた初老の男性だった。
「ああ、アレを見つけてくれたのですね」
「えっ!」
「いや、朝から落としてしまって探していたのですよ」
不敵な笑みを見せながら、そう言ってかけていたサングラスを外した。
「コレがないと不自由ですから、ありがとうございます」
その落ちていた【目玉】を拾い上げて自分の左目にとりつけたのである。
「うわぁぁー!!」
またまた大きい声を上げながら走ってその男性から逃げたのは言うまでもなかった。
終わり。
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