神様?悪魔?
私は、新聞記者をしている。
とある県の山奥にある小さな村で、この令和の時代にも関わらず神様に人を生贄にささげているという情報があり、本当かどうか取材に向かったのである。
「しかし、最寄りの駅からバスで1時間で、バス停から村の中心部は歩いて30分って遠すぎ…」
真夏に来たせいか汗がびっしょりだ。
ようやく村の中心部らしきところまできたが、まったく人に合わない。
しばらく歩いていると、畑で作業している女性を見つけた。
「すみませーん!」
「はーーーい、あら!こんな山奥に久々に人が!どうされたのですか?」
「いいえ、私は新聞記者でして、この村に伝わる風習について取材をしたいのですが、どなた詳しい方知りませんか?」
「そうかい、ならこの村の長老の榊原さんに聞くのが一番良い」
「そうですか、榊原さんのご自宅は何処にあるんですか?」
「この道をまっすぐ行って一番端にある神社の隣が榊原さんの家じゃ」
「そうですか!どうもありがとうございます」
女性に感謝の気持ちを伝えて、榊原さんの家へ向かった。
「ここか!」
表札に榊原と書いてある。チャイムを鳴らしてみる。
ピンポーン
「はーい!」
高齢の男性が出てきた。
「どちらさまですか?」
「長老の榊原さんですか?あの私はこういう者です!」
自分の名刺を手渡した。
「ほう、神社記者さんかい?私が榊原じゃが、それで何を取材しにきたのかい?」
「この村にある昔からの風習について、取材しにきたのですが‥」
「ああ、私達の氏神様のことかい?」
「はい!そうです」
「なら、隣にある神社で話したほうがわかりやすいな、私が神主代行をやっているからね」
「わかりました、よろしくおねがいします」
「榊原さんが、神主をやっているんですね」
「去年まで、専任の神主がいたんじゃが、今はいなくなってしまって、代わりに私が代行でやっているんだよ」
「へー、そうなんですか」
榊原さんと話しているうちに、神社に着いた。
神社の鳥居をくぐると何か空気が変わった感じがした。
神社の本殿の前にやってきた。
「この奥に私達の氏神様が祀られているのじゃ」
「噂の人を
「ハハハッ!今はもうささげていないよ、昔はささげられていたけどね」
笑いながら榊原さんが答えた。
「そうなんですか!私はそのことを取材しに来たんですけど‥」
「もう人を
「どういうことですか?」
「命をささげるのは、もうやめたいと神様にみなで伝えたら、ならば人の三大欲望を代わりにささげよ!とお告げがあったのじゃ」
「それで、欲望を神様にささげているのですか?」
「ええ」
「ちなみに、欲望をささげられた人はどうなっているんですか?」
「ちゃんと生きておるわい、欲望と言っても一つだけじゃ」
「ちょっと待ってください!三大欲望って言ったらどれも大事なものですよ!一つでも無くなったら困ると思うのですが?」
「今のところ何にも問題ないから大丈夫じゃよ」
どうやら
「みたところ、この村は人口も少ないし、このまま続いていくと同じ人が何回も生贄にささげられる可能性だってあるんですよ!もし、3つとも欲望がなくなったら、もはや命を奪っていることと同じじゃないか!!」
私は強い口調で、榊原さんにうったえかけた。
「しかしだな、私達の村は農業が主要産業で、凶作が続けばやっていけなくなるんだ!毎年欲望をささげているこの10年は一回も凶作がないんじゃ!!」
開き直ったように言い返された。
「そんな|作物(さくもつ)、買う人にこの事を伝えたら誰も買わなくなりますよ!」
「そ、それはならん!!」
榊原さんが、オドオドし始めた。
『ドンッ』
私の後頭部に強い衝撃が‥‥
頭から血がポタポタと頬を伝わってきた。
「ううっ!ああッ!」
頭が痛い、うめき声を出しながらその場に倒れた。
「大丈夫か!親父!」
「ああ、助かったよ!このことが広まれば大変だったからな」
薄れゆく意識の中で、2人の狂気的な笑みが見えた。
終わり。
ホラー短編集〜日常に潜む怖い話〜 もっちゃん(元貴) @moChaN315
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ホラー短編集〜日常に潜む怖い話〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます