物悲しさを引きずる導入から制御のできない力に振り回される少女の物語は始まります。
物語の流れの中に溶け込むように情景描写が顔を覗かせており、主人公の境遇とは正反対な、自然と場面が思い浮かぶ読み手に優しい物語です!
作中の雪道を歩くように至る所に残された布石はこれみよがしと鼻につくような置き方はされず、その意味を語られることを静かに待つようにそっと置かれているからこそ気になってしまい、様々な先の想像をかき立てる絶妙なスパイスになっていました!
そして1章を読み終えれば王道の物語が始まる胸の高鳴りが聞こえてくるようでした!
そんな素敵なファンタジー&SFの世界をぜひとも主人公と共に歩き出してみるのはいかがでしょうか!
ファンタジーなら魔法、と連想しそうなところを、敢えて「超能力」を物語内の特殊技能に据えているのが、意外性があって面白く読めました。
この設定で、物語全体の流れが引き締まり、主人公エリンの謎も、より一層引き立っているように思います。
読んでいて、特に深く感じ入ったのは、エリンの孤独の描写です。
自分が心から馴染める居場所を探す。過去を知らず、孤児院のある村でもどこか浮いている。やっと馴染めそうなところを見つけても、彼らとの間には言いようのないズレがある――
彼女自身の謎が暴かれるとき、そして、彼女の「敵」と対峙するとき。彼女は果たして、心よりの居場所を見つけられているのか?
例えそうでなかったとしても、幸せでいてほしい。そういった思いを掻き立てられる筆致です。
エリンの先行きに幸あれ。
一読者ながら、結末までお供して見届けるつもりで、これからも読ませていただきます。