最終話

 

 

 ********

 

 

 純白のドレスは美しい絹と繊細なレースで作られている。纏めた髪の上に乗るティアラには綺麗なベールがついていて、それが遮る視界に幸せを感じた。

 建て直された中央教会の扉の前まで移動して、開かれた先へ足を踏み入れる。神父が立つ壇上の前にいるのは深い青の瞳を持った黒髪の青年。純白のタキシードに身を包んだ彼が私を待っている。

 お父様のエスコートで彼の元へ少しずつ進んでいく。旅の仲間が、この国の友が、たくさんの来賓が私を見ていて少しの緊張と強い幸福があった。

「…幸せになるんだよ」

 彼の元まで辿り着いた時、お父様はそう言って私を手放す。それだけで少し泣きそうで、まだ宣誓もしてないのにと必死に堪える。

「…誓いの言葉を」

 神父の静かな言葉に私たちは一つ息を置く。たくさん練習したけど間違えないかしら…。

「「私たちは、本日この場にて結婚を宣誓します。ともに病める時も健やかなる時も互いのそばにあり、支え合い、両国の代表であることを忘れず…目一杯幸せであることを誓います」」

「では指輪交換の後、誓いのキスを」

 向かい合った彼に左手を差し出す。彼の手が私の手袋を外して、二人で選んだ新しい指輪を嵌めた。私も同じように彼の左薬指に指輪を嵌めて、とうとうベールが外される。

「…これからだって、何があっても逃さないよ」

「そうして。貴方になら捕えられても良いわ」

 互いの気持ちを確かめ合って一瞬のキス。

 巻き起こった拍手は会場を包み、私たちの新しい未来を祝福してくれた。

「きゃ!」

 急に彼が私を姫抱きにする。背中の翼を伸ばして宙に浮いた。

「ナターシャ、このまま魔国へ行こう!」

「どうして!?」

「こんなに幸せなんだもの、僕の両親にも報告しなくちゃ!」

「…しょうがないわね」

 私の渋々の承諾でも彼は喜んでくれる。そのまま直したばかりの教会の扉を破って空へ舞い上がった。

「急ぐよナターシャ! しっかり捕まっててね!」

「落としたら許さないわよ!」

「安心して、絶対落とさないから!」

 

 そうして彼の翼は魔国へと風に乗る。

 まだ全てはここからだと言うのに。

 

 

                   終 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王と私の絶対結婚宣言 三日月深和 @mikadukimiwa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ