エピローグ

     *

 先を行く兄が振り返る。引き返してきてはくれない。ただ、じっと私が追いつくのを待ってくれている。

 もう歩けないと音を上げる私。山頂でごはんを食べたら、下りはいつもこの調子。兄が声を掛ける。

「早くうちに帰るぞ」

 力を振り絞って坂道を駆け下りてきた私を受け止めて笑う。

 家に帰るまでが山登りだぞ、と冗談を言い合いながら、ゆっくりと山路を行く。

     *


 遠征先の山で兄が見つかったのは、その年の春だった。







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山笑う 香久山 ゆみ @kaguyamayumi

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