まず、私が読んだ時の冒頭から少し変わっているのですが……
女神のコミカルな語り口調に、この物語へといざなわれました。
この楽しいけど恐ろしくもあり悲しい女神が、いかにして少女シズと関わることになるのか……と気になり、先を読んでゆくと、そこには、シズという少女がスラムで懸命に生きようとする健気な姿がリアルに描かれていました。
親のいないシズという少女は、働きながら魔法の修行をしています。
一見、辛い生活であるように見えますが、シズを取り囲むキャラクターたちの暖かな心が繊細に描かれており、いつの間にか読んでいる私も、シズの肉親であるかのような錯覚を感じました。
見ているこちらが応援したくなるものがシズにはあります。
やがてシズが女神と邂逅する時――それは、悲劇の開幕でもあるのですが――そこは是非、皆様の目で読んで感じてもらえればと思います。
キャラクター一人一人に対する作者様の愛情が溢れる物語でした。
でも、物語は、これで終わりません。
まだまだ、シズの旅は、はじまったばかり。
これからも、シズと一緒に旅が出来ると思うと、今から楽しみでなりません。
とくに魔法のシーンは、必見で、個性的な魔法の数々に、きっと胸をときめかせることでしょう。
人攫いから友人を取り戻そうとし、瀕死の重傷を負った主人公のシズ。そんな彼女の下に舞い降りたのは、別世界で色々とやらかし、邪神として封印されていた"最期の願いの神"だった──
スラムという過酷な環境でもめげることなく、ひたむきにその日その日を生きているシズの健気さ、そんなシズを見守る大人たち。彼らのやり取りに心温まる一方、世界観はシリアスでどうしようもない外道や悪党も登場する。
文章は一人称で進められるため、登場人物の心情が分かりやすく、感情移入しやすい。また、近況ノートに登場人物のイラストがこまめに投稿されているので、「なるほどこのキャラはこんな感じか」と、場面の想像がしやすくなっているのが特徴的だ。なんという親切設計。
ひたむきに生きるシズの姿を、是非ともご覧いただきたい。