この珈琲(恋愛小説)から醸されるアロマは…

「マスター(作者)この前はフィリピン産の珍しい夏みかんのミックスジュースだったけど、今度の新作は、何?」

「んっ?これブレンド珈琲だよね?」

完熟豆を濃く焙煎された珈琲豆(飛鳥:41歳)
若採りの青さが残る珈琲豆(拓海:25歳)
のダブルブレンド。
普通なら合わない取り合わせだ。

私は一口含んだ。

口に広がる苦味は、「辛い」じゃない…「やるせない」ほど積極的でも無い…
そう『切ない』だ。

同棲する16歳下の恋人拓海の将来を慮る飛鳥
「他に好きな人ができたら、ちゃんと教えてね。私はいつでも君の事を思い出にできるから」
そう嘯く言葉とは裏腹に拓海への執着の燻りは、『切ない』苦味として舌(心)を鮮烈に刺激する。
そして、舌に消える酸味は『涙』…

しかし…これは!
喉を通り鼻腔に醸されるアロマ…
奥に揺蕩う雑多な香りが珈琲(物語)の輪郭と深みを形作っている。
そして…
 「コレは、『愛』だねっ? マスター」
マスターは、ドリッパーにゆっくりと湯を注ぎながら微笑んだ。

ドロついた味になりがちな、この年の差がある珈琲豆を純粋な『愛』に精錬するマスターの腕に私は舌を巻く。

「でも、マスター『切ない』だけでは…」
「えっ?三杯セット?(3章構成)だからカップが小さいんだ」
「二杯目はトリプルブレンドなんだね?」
まいったなぁ、カフェイン(読後の余韻)過多で今夜は寝られそうに無い。

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