第2話:ビギナー狩りに遭遇
かにゃりーさんが入室しました
配信ってどんな感じだろうと思った
目の前の自分のアバターが動いている
画面の上の方に目のマークがついているが現在は「0」になっている
これがもしかして、現在の視聴者数を表しているのかな?
だとしたらまだ、今はまだ誰も見に来ていないということか
REALTY運営からのアナウンステロップが流れ出す
REALTYリアルティ世界へようこそ!まずは入室された方一人一人に自己紹介してみよう
今日あった出来事なんかを報告してみるといいよ!
そんな感じのテロップが流れ出し、ああなるほどこれはあれだな
初心者を導くいわばチュートリアルみたいな感じなんだろう
しかしこれはゲームではなく、ライブ配信
実際に来るお客様は紛れもなく、画面の向こう側に存在する現実世界の人間
その人がスマホを通して、私のこの仮の姿を見に来るわけである
正直、緊張する
「何を話したらいいんだろう・・・?」
あれこれ操作していたら、入室者が現れた
闇光みれんさんが入室しました
水霧ゆあささんが入室しました
闇光みれん:こんばんはー!
アツ氏さんが入室しました
アツ氏さんがいいねをしたよ
水霧ゆあさ が星スタンプ×10をあげました
大学生さんが入室しました
「わわわわ、人がいっぱい!!皆さん来てくれてありがとうございます
初めまして本日からREALTYリアルティにてライブ配信を始めたかにゃりーと申します!皆さんと仲良くやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします」
一気に人が来たから私はびっくりした
正直何を話したらいいんだろうと思いながらも、とりあえず何か雑談しなければ
そう思いながらも、まずちゃんと自分の声は届いているのだろうか?
その疑問を持ちながら、再度聞いてみた
「あの、自分の音声ってちゃんと入ってますか?」
初心者丸出しの発言であることは認めよう
しかし正直初めてライブ配信を行うものからしたら、ちゃんと声が届いているのかが心配だからである
恐る恐る確認をすることにしたのだが、すると・・・
闇光みれん:聞こえてるよ
水霧ゆあさ:大丈夫〇
大学生:こんばんはー!かわいい声だね!
き、聞こえてたー!!大丈夫だった・・・
正直その一言で安心した、というか私の声がかわいい!?
言われた事ないのにな、そんなこと
なんか嬉しい
大学生:いくつぐらいの方ですか?学生さん?
1人のリスナー様から質問が来た
恐らく年齢についてだろうが、どう答えるべきか?
中には成人済みだが永遠の17歳を売りにしている人もいるだろうけど
自分の場合は現役の女子中学生だし・・・
「えっと、私は現在14歳の中学2年生です」
大学生:そうなんだ、若いね~
闇光みれん:かあいいねー
水霧ゆあさ:配信頑張ってね
水霧ゆあさ が初見ですをあげました
「なんかさっきからギフトたくさんありがとうございます」
色んなアイテムを貰うたびに空から落ちてきたり、文字が表示される
Vtuberってこんな感じなんだろうか?すごく嬉しい気持ちになる
配信が15分を突破したあたりで、クラッカーのようなものが私の配信を祝福してくれた
おそらく運営の演出だと思う
毎日配信1日目を突破したよ!
これからも頑張って配信していってね、というテロップが流れ始めた
それと同時に大きな金色のくまさんのぬいぐるみが落ちてきて
私のアバターに重なって邪魔をしてくる
というか、私のアバターが見えない!!なんだこれ
「あのすいません、このくまさんめっちゃ邪魔なんだけど、これ消すこと出来ないのかな?」
私はリスナー様に聞いてみた
闇光みれん:その演出は一定時間経てば消えるよ
水霧ゆあさ:運営さんの演出だからね
「そうなんですね、教えてくれてありがとうございます」
とにかく私は喋りまくっていた
その後も色んな人が入室したけど、闇光みれんさんと大学生さんはずっとお話をしてくれていた
途中から何も発言しなくなった人や、無言のまま入室される人もいた
まだまだ何も分からないけど、でも何だろう
こうして人とたくさんお話ししたのは、どれぐらいぶりだろう
いつも隣のクラスの菜緒としかお話ししたことなかったから、なんだかすごく嬉しい
アバターを褒めてくれる人もいた
私は配信を終了させた
フォロワーも3人増えた
なんだろう、バーチャルの世界ってすごいなって思えた
今まで自分を無視し続けていた人たちも、この世界では自分は主役になれるんだ
そんなことを考えながらこの日はログアウトし、部屋の電気を消して眠りについた
次の日の朝
相変わらずの学校生活を送る中、私はポツンと席の端っこ
クラスのウェイ系男子が「よっしゃ今からメロンゲームやるぞ!!」と言い出す
メロンゲームとは、最初みかんの果物から始まり、ぷよ〇よやテト〇スみたいに空から落ちてきて、それをくっつけるとフルーツがりんご、桃へと進化していき、最終的にメロンにまで進化する
そんな感じの落として進化させるゲームである、今それが流行っているみたいだ
クラスの女子達はテックトッカ(TecToka)とかいう15秒から30秒ぐらいからなるショート動画を撮影し、制服姿で踊りだしている
一度バズったりすると、100万回再生も、200万回再生もするらしく、特に制服姿のダンスは同じ世代だけでなく、おっさんらにも人気らしい
正直あまり、そういうことは現実世界の自分の姿ではやりたくないと思っている
結局は現実世界でもネット世界でもメタバース世界でも、繋がるのはいつだって自分と同じ「人間」なんだ
後はどう付き合っていくか、どう周りと合わせていくか
私は窓の外をぼんやりと眺めていた
雲行きが怪しいから、今夜は雨になりそうだ
部活を終えた後、急いで帰宅した
夜ご飯を終え、お風呂に入り、そしていつものソファベッドに横になる
今日も配信を頑張ろう
配信をすると、昨日来てくれた闇光みれんさんと大学生さんが2回目の入室をしてくれた
私の配信を楽しみにしてくれていたのか、またきたよというギフトを貰った
今日もたくさん私はお話しした
2人はずっと話を聞いてくれた
今日あったこと、メロンゲームっていうのが流行っているみたいだけど2人はやっているのか
学校の話題を持ち込んでみた
闇光みれん:私は今「集まらんかい!どうぶつ共の山」っていうゲームをプレイしているよ
大学生:私はソプラピューンっていうインクを相手に飛ばして陣地を占領するゲームかな?
色んなゲームがあるわけだし、趣味は様々だ
でもこうして普通にお話をしているのが、楽しいなと感じた
今日も色んな人が来てお話をして、配信を終えた
次の日も、次の日も
毎日が楽しいな、そんな日々が続いていた
はずなのに・・・。
配信を始めて6日目の出来事だ
配信を行っても、15分経過しても入室者数は0だった
「おかしいな・・・、今日は誰も来ないぞ?」
20分経過したあたりで大学生さんが入室してくれた
そこで色々とお話をしてみた
「今日はなんか全然人が来なくて、それに何でしょう?大学生さんや闇光みれんさんはよく入室してくれているのに、他の方は1回会っただけで、再入室しないのは何故でしょう?」
大学生:それはね、私は見る専だから気に入った配信を見に来るんだけど、他の人はほとんどポイント回収をしに来る人達、もしくはビギナー狩りをしに来る人達だね
「え?ポイント回収?ビギナー狩り?何ですかそれは?」
大学生:かにゃりーさんも一度他の配信者のところに見学にいくといいよ。そしたらね、配信を30秒間ずっと見ていたら無料ポイントが100pt付与されるから、それを別の配信者に投げることが出来るんだ。こんな感じにね
大学生 が星スタンプ×10をあげました
大学生 が配信のタケをあげました
「おお!これは最初に水霧ゆあささんがくれたギフトアイテム!」
大学生:これはね、別の配信者のところに行って30秒間見てたら貰える無料ポイントのギフト。色んなギフトがあるけど、3000ptまで貯めたら「全力の指輪」っていうものを投げれるんだけど、これを推し活してるリスナーは推しライバーに投げるの。そのポイントを集めるために、皆色んな配信を見てはすぐ出て、入退室を繰り返すんだけどそれを「枠回り(色んなライブ配信を観に行くこと)」と呼ぶんだ
「へぇ~、枠回りっていうのがあるんだね。それで昨日来てくれたのに、今日来ないのはポイント回収しにきたってことなんだね」
大学生:そうだよ、それともう一つ気を付けてほしいのがビギナー狩りをしている配信者について。ライバーの中には自分の配信に人を呼ぼうとするために、いきなりフォローをしてくる人がいるの。特に初心者はフォロワーもほとんどいない状態の時にフォローされると嬉しいと感じると思うけど、それはあくまで相互フォローとなって自分の配信枠へ誘い込む行為。行ったらダメってわけじゃないけど、その人はフォロワー稼ぎをメインとしているから、正直あまり良くはないかもしれない
「どうりでこんなに人がたくさん来ているのに、全然同じ人が再入室しないわけだ・・・」
私は驚愕した
この世界もそんなに甘くはなかった
沢山人が来てるから、たくさんフォロワーを増やして人気ライバーになれるのかと思った
でも実際にはポイント回収業者とビギナー狩りをするベテラン配信者の餌食となっていたのだ
知らぬ間に・・・。
竜宮城の乙姫さんが入室しました
竜宮城の乙姫さんがフォローしたよ
竜宮城の乙姫さんがいいねしたよ
竜宮城の乙姫:こんばんは
大学生さんと話をしていた時、突如現れたこの方は何者なんだろう
今までの人と全然違う雰囲気だ
なんせこの方はフォロー数200に対し、フォロワー数10,000を越えていたからだ
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