探偵諸君よ後は任せた。

ろくろわ

探偵は貴方です。

 この話を読んでいると言う事は、今回の探偵は貴方と言う事だ。そうそう貴方です貴方。

 私には貴方がスマホでこの話を読んでいるのか、パソコンで読んでいるのか。はたまた紙に印刷して読んでいるのかは分からないし、実はそんな事はどうでも良いことなのですが、どうかこの話を読んで謎を解いて欲しい。そして私達にどうすれば良いのか教えてください。


 まず話を進める前に「ミステリー」と「サスペンス」について簡単に説明しておきたい。

「ミステリー」とは犯人やトリックの謎解きをしていくもの。

「サスペンス」は視聴者や読者に犯人が分かっていて「緊張・不安」という視聴者や読者の心理状態に重きを置いているもの。

 そして今からする話は、犯人やトリックが分かっているサスペンス色の強いミステリーの話だ。


 さて、唐突ですが貴方はどうすれば完全犯罪が出来ると思いますか?そもそも何故犯罪が露呈するのでしょう。簡潔に話すと、それは矛盾と死体しょうこが残るからだと考えられる。

 例えば一人で事件を起こし、死体を隠したとする。だが死体が見つかり疑わしきが一人なら、いずれバレてしまう。

 では、二人で事件を起こし、死体を隠したとする。死体が見つかるが疑わしき一人に共犯者が誤魔化しを行うと、真実が分かりにくくなる。しかし二人に矛盾が出てきて、二人が共犯者である方に矛盾が生じなければ、二人が犯人となる。

 それなら、皆で事件を起こしたとしたら。例えば十人で無人島に行き、九人が共同して事件を起こす。そして死体を隠し、九人で無人島に行って九人で帰ってきたと証言する。そうすると最初から一人は存在しない事になる。

 つまり、私達がした事はそう言うことだ。

 Aを殺す為に、Aに同じ恨みを持つ私達六人が集まり、Aの存在を悟られないように口裏を合わせて我々の一人が所有する無人島へと連れてきた。そして地下の部屋にAを招くと食事に毒を盛り、痕跡が残らないように地下室に火を放ち、更に地下室のあった建物もろとも更地にした。そうする事でこの無人島にAは来たこともないし、建物だって存在しない。我々六人で無人島に来て六人で帰る。完全犯罪が出来るのだ。

 犯人は最初から私達六人で、トリックも毒を盛り、火を放ち、建物を潰す。これの一体何がミステリーなのか。犯人が最初から分かっており、トリックも分かっている。これでは出来の悪いサスペンスでは無いかと思うだろう。

 ではこの話の何処に謎があったのか?それは最後まで話を聞いて欲しい。

 私達は当初の計画通り、全てを実行した。念には念を入れて毒の量もガソリンの量も多めにした。建物を更地にする為に建物は爆弾で発破した上で潰した。

 明らかに誰が見たって状況的に計画は大成功だった。そう大成功だったのに私達には大きな謎が残され、この謎を解くことが出来なかった。


 だから貴方にこの謎を解いて欲しい。


 それはなにか?私達はこれだけの事をしたはずのに、Aはこの後普通に生き残って普通に帰ってきた。




 了

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