第二十話 従魔とイチャイチャして食事してみた!
異世界生活2日目を終え、『囁く小悪魔亭』に戻ってきた俺たちは、少し遅めの夕食をとっていた。
「んもぅ、おじさんは恥ずかしがり屋すぎぃ。あーしはおじさんの従魔だし、ちゃんと街中では鎖を持ってるわけだから、他の人にジロジロ見られても問題ないじゃん」
「それはそうなんだがな。こう、なんていうか、周りの人の視線が厳しいんだが……」
「え? そうかなぁ?」
「俺だけがそう感じるのか?」
「まぁ、サキュバスを従魔としてる人は、精気に溢れ、性欲も強い人って思われるらしいけどぉ。あと、魔物に欲情する変態とかって言われるらしい。あ、でも100年前の話ね。今は分かんない」
そ、そういうことか……。
だからクローデットを連れて地下墓地から出て来てから、街の人がヒソヒソ話してたのとか、冒険者から厳しい視線を向けられてたのはそんな意味があったのか。
それは衛兵も声をかけてくるはずだ……。
「俺が受けていたのは、そういう視線だったということか」
従魔にしたサキュバスの鎖を持って街中を歩く、性欲溢れる変態。
それが街の人や冒険者から向けられた視線の正体。
「大丈夫、大丈夫。おじさんが優しくて、真面目でな人だってのは、あーしが一番知ってるわけだしぃ。はい、おじさん、あーんして」
クローデットの言葉に釣られ、思わず口を開けると、フォークに刺さった肉を口内に押し込まれた。
脂がほどほどにのってて、肉質も柔らかい美味い肉だ。
さすが老舗の超高級宿の食事。
肉一つとっても美味い。
空になったフォークで、新たな肉を刺すと、クローデットはそのまま自分の口に運ぶ。
クローデット、それって間接キスだろ……。
いや、まぁ、毎朝キスはしてるわけだが……。
とりあえず、現状の俺への評価が分かっただけでもヨシとするか。
まだ2日目だし、真面目に冒険者生活をしてれば、街の人の評価も変わってくれると思いたい。
「んふぅ、美味しいぃ。おじさんの味がするよぉ~。これだけで元気でるぅ~。頑張った甲斐があった」
「俺の味はしない、しないぞ。というか、飯くらいは自分で食える」
自分の分の肉をナイフで切り、口に運ぶ。
異世界の飯が口に合うか不安だったけど、『囁く小悪魔亭』の食事なら問題なく食べ続けられそうだ。
他のところの食事がどんな感じかは分からないが。
食事と言えば、依頼で遠出すれば野営とかもするだろうし、保存食とか野営道具とかはいるだろうなぁ。
ゴブリン討伐で稼いだ金で、そういった物を買い揃えるのも必要か。
「クローデット、明日は買い物に行かないか?」
「買い物? なに、なにぃ? あーしのえっちな下着買う?」
「違う、違う。野営道具とか保存食とか買い揃えようと思ってな。ほら、泊まりで行く依頼もあるだろ」
「たしかにそうだね。泊まりの時、おじさんと一緒に寝られる寝袋がないと困るぅ~」
「一緒に寝られる寝袋があるかは分からないがな。明日は買い物でいいんだな?」
「うんうん、行く、行く! おじさんさんと一緒に寝られる寝袋探しぃ~♪」
一緒の寝袋は、俺の理性がもたないから、まだ早い。
それにしても、買い物行きを喜ぶクローデットが可愛すぎる……。
彼女のころころ変わる表情を見てるだけで、今日の疲れは吹っ飛びそうだ。
向こうに居た時は、学生時代に付き合った人もいるけど、こんな気持ちになったことはなかったのにな。
それだけクローデットが、俺にとって魅力的な異性だということだ。
「おじさん、もう一回、あーん」
クローデットの声にまた釣られて、口を開けてしまう。
もう一度フォークに刺した肉を口内に押し込まれた。
「おじさん、美味しい?」
無言で頷きを返す。
……んまぁいな。
クローデットが食べさせてくれたからかもしれん。
って、俺もこんなこと思ってるわけだし、クローデットのことをとやかく言えないな。
俺は自分のフォークに肉を刺すと、お返しにクローデットに食べさせてやった。
「んぐぅ。おひはんのおにくぅう~」
肉を食べたクローデットは、目を見開いて喜んでくれた。
こんな生活がずっと続けられるといいな。
夕食後、クローデットが先に風呂に入ったので、ベッドに横になった俺は、明日の買い出す物を書き出してたら、いつの間にか睡魔に襲われ、目を瞑っていた。
脳筋おじさん、物理で殴る最強冒険者目指すつもりだが、いつの間にかパーティー枠が助けたヤンデレ美少女たちで埋め尽くされていた。 シンギョウ ガク @koura1979
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