第45話
僕は下の階を探索している仲間と合流するため、サクラさんと共に階段を降りる。途中で再び地縛霊が現れた為、少し足止めを食らうが、僕もサクラさんもなれたもので、落ち着いて対処できた。
今夜も僕らは大きな収穫は無かった。途中、サクラさんが何かのメモを見つけていたが、何やら僕に見せたくない理由でもあるらしく、隠されてしまう。まあ、無理強いして見せてもらう必要も無い。きっと大した内容では無いのだろう。
下の階には皆が既に集まっていた。キョウ、トノ、ジン。マヤちゃんと西成田さん、そして四季さん。更に僕とサクラさん。倉田と岡田の姿は見てないが、代わりに名前の知らない女子が居る。確か図書委員をしている子だ。
「上の階は収穫あったか?」
「いや……特には」
僕はサクラさんのメモの事は伏せて報告する。
「そうか。こっちは一つ隠し部屋を見つけた。だが、特に日記の部屋に関わる様な情報は得られなかったな」
僕は一瞬期待しかけたが、そんなものだろうと落胆する。これで僕らが見つけた隠し部屋は、五百六十二部屋目がだ、何も進展はない。
「ねえ、何かおかしいと思わない?」
西成田さんが突然声を上げる。
「おかしいって何が?」
「どうして私たちは日記の部屋を探しているの?」
「どうしてって、それはギシガシに連れてかれないようにするためだよ」
何を今更と思いながらも、僕は答える。一体どうしたのだろうか?
「そうだけど……でも何で夜に探しているの? 昼間の明るいうちだったら、明りの必要も無いし、探索もはかどると思うのに。それに、よく考えるといつまでたっても夜が明けないわ。もう私たち、何日間も……いえ、何年間も夜のまま探索を続けているような気がする」
「西成田さん。何を言っているの? 疲れているのなら、少し休んでもいいのよ?」
四季さんが彼女に寄り添うように言う。しかし、その目は何処か暗く、不気味に思う。
「……大丈夫か?」
キョウの問いかけに、西成田さんは渋々といった様子で頷く。
「よし。それじゃあ探索を再開するぞ。次も二時間後にここで集まって、進捗の報告だ。くれぐれも、地縛霊に捕まらないように気を付けてくれ」
キョウの号令で再び皆が散る。僕とサクラさんも二階に上がって探索を再開させる。
ふと、サクラさんのポケットから紙が滑り落ちる。さっき彼女が僕から隠した紙だろう。
「ねえ、サクラさん、これ……」
僕が拾い上げて声を掛ける。しかし、その拍子で思わずその中を見てしまう。
[そこは現実ではない。早く目を覚ませ。前田波七海]
黒い日記とギシガシの夜 秋村 和霞 @nodoka_akimura
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