三通目 『海が綺麗で』
今日はあかりとの約束した日である、まぁそこまで特別といった事でもないのでゆったり準備をする。集合が午後からという事で朝はゆっくりと起きれた。
『準備できそう?』
『あぁ、ちょっと早めに出れそう』
『分かった』
こんな日常的な会話をして準備を終える。所でunknownは、昨日無視をすると朝まで来なかった。因みに朝来たメールというと
To:『おっはよー今日も空が綺麗だね、まぁこっちはめっちゃ暗いけど』
異世界ジョークというつまらないジョーク+挨拶が送られてきた。因みに向こうの世界とこちらの世界は時間差があるので挨拶をするのでも一苦労なのだ。
そんなノイズは忘れて、今日は久しぶりの外出なので心が弾む。特別とまではいかないが、遠出となると少しワクワクするものだろう。
『準備できたからそっち行くわ』
『はーい』
俺は軽い足取りで玄関に行き、靴を履く。靴は海に行くとなると砂などが気になるので、結構ゴツめな物にした。ドアを開けると、春とは思わせないほど日差しが強い。
俺の家からあかりの家まで徒歩10分かかるか、かからないか位の距離感だ。とは言っても相手は女子なので自分から家に行く。
ピンポーン
『はーい』
インターホン越しから聞こえるあかりの声、
「おはよー、おっバッチシきめてんねぇ」
「そりゃ遠出となれば人目は気にするだろ」
やたらとあかりは服装は気にしてるっぽいな、今まで見たことないぐらい綺麗だな。
「あかりも綺麗だぞ」
「え?いやいやそんなお世辞いいから、もう!」
「お世辞じゃないぞ、ほんとの事」
「あ~もう!そんなこと言ってないで早くいくよ、この女たらし!」
「最後の方なんて?」
最後の方が聞こえずらかったので聞き返す、張り切りすぎているのだろう
俺とあかりは徒歩で駅まで行く。駅までざっと数十分といったところ、歩きながら世間話をしてたら着くだろ。
「今日、日差し強いけどそんなワンピでいいのか?」
「何よ!そんなってこれ、意外とお気に入りなんだけど…」
あかりのワンピは白一色でまるでアニメのようなワンピだった。それに比べて俺はタンスから引っ張り出した様なファッションセンスなので人の事は言えないのだがな。
「海の帰りにカフェとか寄ってかない?」
「別にいいけど、どこのカフェに行くんだ?」
「それは大丈夫、ちゃんと下調べはしてあるから」
下調べしてんだ、気合入ってるなぁ~、まぁ女の子ってそういうの敏感なんだろうな。
そんな事よりあかりが異様に近い、待て待て今までこんな事あまり無かったような?
「あかり?なんか近くない?」
「そう?これぐらいが普通だと思うけど」
いやいや、声とテンションが違うんだけど…うーむ、ここは男が試されるぞ
何か違うとするならば…
「香水かえた?」
「あ!やっぱり!?気づいちゃうかぁ^^まぁ奮発して買ってみたんだよね~」
あっぶねぇ~、ここ絶対ルート分岐だろ!
「そういえば、来週からテスト期間だけど大丈夫?」
え?テストあんの?、どうせうちの学校だがら…
「今回も補修があるらしいよ?」
「あかり、いやあかりさん、マジで今回も頼む!」
俺は絶望的に自主学習ができないので、いつもテスト期間はあかりやミツキに頼っている。
「ま~た私に頼る~、自分から勉強はできないの?」
「この引きこもりコミュ障陰キャオタクにできるわけないだろ!俺はもうお前しかいないんだよ、頼むこの通り!」
俺は立ち止まり、手を頭の所まであげる。
「まぁいいけど、テスト赤点回避したらいつものやつ奢ってよ?」
「わかったから、頼んだよ?」
「任せんしゃい」
世間話やテストの話をしているとすぐに駅までついた。更に偶然にも駅がガラ空きなのですぐに電車に乗れた。
「後どのぐらいでつきそう?」
「まぁ電車だし1時間もかかんないと思う」
日が差し込む涼しげな電車、俺とあかり二人だけ
「なんか懐かしい気がするな…」
「そう?まぁ確かにロマンチックだしね」
それでもより鮮明に思い出そうとしている、この虚しさは何だろうな
『次は○○海岸、次は○○海岸、お荷物の取り忘れにご注意下さい』
「降りるか、」
俺らが下りた駅は都会とも言い難い、涼しげな駅だった。
「なんかホントにロマンチックだね」
「な、アニメでありそう」
おっと、ここでオタクが発動してしまった。駅は海岸のすぐ前なのでそこまで歩かなくても良さそうだ。
「いや~苦労してここまで来たかいがあったわ~」
あかりがすぐさま砂浜に走り出した。
「あんま走んなよ~ケガ誰てもこまるんだから」
「はーい…ねっ!このワンピ、海と似合ってない?」
あかりが後ろで腕を組み振り返った、本当にアニメのようだった。
その瞬間頭にノイズが走る。それは知らない記憶が流れ込んでくるかのように
(やっぱり昔にもあったような気がする)
「めっちゃ似合ってるぞ!」
俺は声量を少し上げあかりに向ける
「やっぱり?やっぱ私って天才なんだな!」
あかりもそれに応じて声量を上げる
急に視界が暗転する
私は懐かしいメロディーを口ずさむ。この先に何があるか分からない、でもあの人の迎えを待っている。
私がいつもの景色を眺めていると急に頭にノイズが走る。
それと同時に空がひび割れる。
「懐かしいね」
私の目に映るのは、ひび割れた空とアニメのような海。
かつてあの人と一緒に行った綺麗な海
「忘れられないのかもね、思い出ってものは」
向こうの君は月明りが似合っている unknownn- @unknownn-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。向こうの君は月明りが似合っているの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます