第2話 転生令嬢は長兄に真実を語る②

 ショックで思考停止中のマクベス兄様だが、このままでは話し終える前にお父様たちが帰ってきてしまう可能性もあるので話を続けることにした。


「マクベス兄様。話を続けますよ」


「ああ、すまない続けてくれ」


「皇家やキリヤ侯爵家以外の英雄の血筋である侯爵家は、ほとんど抵抗することなく城を明け渡し当時は小国だった隣国マグノイア王国へ亡命しました」


「なぜそんな簡単に明け渡したのだ?英雄の血筋の侯爵家が4家、貴族側はキリヤ侯爵家だけなのだろう?」


 父様を見てればわかるが頭のできも貴族としてもイマイチであるのに強さでいえば頭1つ2つぬけているのだ。


 マクベス兄様や私には遠く及ばないけどね。


「5大英雄といわれてもキリヤ家のご先祖様はその中で頭1つくらいぬけていましたし、キリヤ家は他の4家より先祖の血を濃く受け継ぐ確率が高かったからです。

立場を失ったとしても血筋を絶やすことを避けた皇家と4家は亡命を選ばれたわけです」


「マグノイア王国を亡命先に選んだ理由は何なのだ?隣接しているから移動に危険が少ないとはいえ、当時はまだ歴史の浅いマグノイア王国ではなくても国力のある国はあったのだろう?

それに貴族側は逃げ切れないように追手を放ったりしなかったのか?」


 そうなのよ。反逆して国を我が物にしたければ皇家や逆らう貴族家は生かしておいては後々面倒になるから根絶やしにするものなのよ普通……


 または悪政を行っていたわけでなく、貴族たちが私服を肥やすのに不都合なだけで国民からの支持が高かったのだから皇子か皇女の1人だけ生かしておいて傀儡の皇帝にしたり、皇家の血筋があるという正当性を残しておくべきだったはずなんだけどね普通。


「5大英雄が英雄と呼ばれるようになった理由は誰もが知っていることだから説明を省きますわね。

他国は国力を取り戻そうとし、大国ほど自分たちに成り代わろうとしているのではとイスカリオー帝国に侵略戦争を起こし敗戦を続け国は滅亡し、イスカリオー帝国に領土明け渡してました。

なので何か企んでいるのではと疑ってくる大国より小国の方が受け入れやすかったのです」


「なるほど」


「貴族側が追手を放たなかった理由は、乗っ取りがスムーズに成功したことで満足してしまいその後の事まで考えなかったからです」


 私腹を肥やすことには使う頭あってもそれ以外に使う頭はなかったんでしょうね。

 そんな者たちばかりだったのによく国が滅亡せず残っていることには関心します。


「なるほどな……よくそんな考えの足りない者たちばかりで今も国が残っているものだな」


 やっぱりマクベス兄様も同じ気持ちのようですわね。


「そうですよね。新皇家になってイスカリオー帝国側から侵略戦争仕掛けるようになり連戦連勝で領土拡大が続け現在に至ります。

マグノイア王国は、亡命したイスカリオー帝国旧皇家と4つの侯爵家の力を借りて発展していき、友好国を増やし連合国となり、1つの大国に纏まり現在に至ります。

こちらはイスカリオー帝国と違い平和的に領土拡大をして3大大国の1つになりました」


「そうだな。旧皇家と4大侯爵家のマグノイア王国での扱いはどんな感じだったのだ?

王家に協力できる立場だったのだからそれなりの地位にはいたと思えるがな」


「皇家は公爵位を与えられ、唯一の子である皇子はマグノイア国王の唯一の子である王女とご結婚されました。

4大侯爵家は、イスカリオー帝国時代同様侯爵位を与えられました」


 普通は皇族は兎も角、他国の貴族を高位貴族にするのは反発が大きいのでしょうが建国から10年と歴史の浅い国なので貴族の数も少なく、貴族としての経験もあるので反発もなく受け入れられたようです。


 英雄の子孫だというのも大きいとはおもいますけどね。


「そういえばイスカリオー帝国貴族の反乱について私も学んでないし、歴史にはないがどうしてだ?」


「この世界でイスカリオー帝国に次ぐ力を持つのはどこでしょうか?」


「創造神イカルダ教国だな」


 世界の多くのものが信仰している創造神を主神としている創造神イカルダ教の総本山である。


「そうです。イカルダ教はイスカリオー帝国の新皇帝の皇弟が教皇となりその歴史を抹消したのですよ」


 宗教や信仰は恐ろしいですからね。何処に信者がいるかわかりません。


 多くの者が創造神を信仰している創造神を主神とする宗教は創造神イスカル教と創造神イカルダ教の2つあるのだがイスカル教はマグノイア王国を中心にマグノイア王国と友好的な国に信者が多い。


 イカルダ教は創造神イカルダ教国、イスカリオー帝国を中心に信者が多く、国ができるくらいなので世界の4割がイカルダ教信者と言われる。


 ですから自分以外周り全員が信仰者である可能性もあります。


 トップである教皇が問題のある者だと余計なことうっかり言ってしまえば消されますからね。


 当時はイスカリオー帝国に批判的なことを口にした者は身分に関係なく異端だとして殺されたそうです。


 創造神を主神と崇め、名前を間違えているくせに創造神の名のもとにと偽り、人を殺め続けているイカルダ神教にキレてましたわね。


 神はたとえ創造神でも地上への介入は禁止されてますから神託を授けて地上の人に何とかしてもらうしかないので歯痒いと言ってました。

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転生令嬢は無能とされる長兄と共に 紅 蓮也 @-T2Ya-

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