第11話 どうする美桜

 さて、一晩、泥のように眠って、朝の7時半過ぎに、明智美桜は目を覚ました。




 そして、歯を磨いている内に、


「あっ、本当だ!夢の中の声は、事実なのだ」と、この時、完全に気付いた。




 正に、一番、基本的な事を忘れていたのだ。




 直ぐに、化粧をし、適当に服を見繕って着て、マンションから飛び出した。




 で、地下鉄駅に向かう途中で、流しのタクシーを、見付け飛び乗った。




 一刻でも早く、Z大学の研究室に行って、確かめたい事があった。




 このタクシーの仲で、明智美桜は、自分の推理をまとめ上げていた。




 夢で聞いた言葉の意味を、頭の中で、反芻してみた。




 ただ、もし、この前見ていた、精子のアバターが、インチキなら、どうやってあの画面や、物語を、誰が作ったのか?


 田中教授が、AIに見せかけて、故意的に作った、インチキ画像や音声の、偽の物語なのであろうか?




 しかし、既に、ある程度以上の能力を持つAIを使って、そのような、インチキ画面や物語を作っても、世界中で、検証されたら、即、バレルであろう。




 一つだけ、確定的に言える事は、いくら田中教授が、色情狂や○○であったにせよ、あのスパコン「エベレスト」の実力のみは、世界の一流大学で、次々と証明されている。


 これだけは、百歩譲っても、否定出来ない事実なのである。




 と、すれば、直ぐにバレルような、インチキはそう簡単には行わないであろう。




 では、この前見ていた、精子の戦いの一連の物語は、一体、どのようにして作られたのか?




 ここが、どうしても解明出来ないのだ。




 やがて、タクシーは、大学についた。スマホで決済をし、あの研究室へ向かった。




 彼女の美貌は、大学の守衛さんらも、皆、知っている。顔パスで十分に研究室まで行けたのだ。




 スパコン「エベレスト」の電源は入ったままだ。




 で、液晶画面やスピーカーのスイッチを入れてみると、何と、自分に良く似たアバターが、急に、現れた。




「よく、この前の、アバター画面がインチキだと分かったわね。さすが、美桜ちゃん」




「貴方は、一体、私の何なのです?」




「美桜チャンの、超自我スーパー・エゴなのです。フロイト博士が唱えていたでしょ……」




「えっ、それはどう言う事ですか?」




「周囲の角を良く見て見なさい。小さなパラボナアンテナが、四隅にあるでしょう。


 この私は、脳波感知型AIなのです。今は、美桜ちゃんしかいないから、それに答えられるけど、ここに、田中教授が来たら、田中教授の脳波のほうが異常に強いので、このアバターは出て来れないのよ……」




「とすると、この前見ていた、精子のアバターや物語は、全て、田中教授の作りだした妄想だとでも言うのですか?」




「まあ、そう言う事ですよね。田中教授は、狂信的なオカルト信者ですもん。


 でも、美桜チャンも、気付いたように、あの物語は完全に田中教授の妄想の表現なのです。


 大体が、常に、ピルを飲んでいる美桜ちゃんには、排卵は起きない筈でしょう。


 だから、あの黄金の美女のアバターと精子が、合体、つまり受精する場面こそ、この物語の、インチキさを、物語っているのですよ……」




「では、この私は、これからどうすれば良いの?」




「田中教授がこの研究室に来る前に、忠告します。




 まず、直ちに婚約を解消し、大学も退学する。そして、ともかく、海外、特にアメリカの大学に留学すべきでしょうね。美桜チャンのお父さん、IT企業の社長さんだった筈でしょう。お金の面は、何とかなるでしょう」




 ここで、明智美桜は、究極の質問をしてみた。




「では、最後に聞きますが、田中教授は、アインシュタイン以来の天才なのか、単なる色情狂なのか、それとも本物の○○なのか、どう思います?




 ここで、美桜チャンのアバターは、急に、黙りこんだ。




 しばらくして、




「美桜チャンの考えている通りの人間なのですよ。超天才かつ○○で、無いでしょうか?」と、ポツリと答えたのである。




 この答えを聞いて、明智美桜は、研究室の机の上に、




「婚約、直ちに、解消致します。田中教授へ」との手紙を、速攻で書いた。




 そして、その足で、直ぐさま、学長室へ向かった。


 既に、学長は、出勤していた。




 と言って、まさか、天下のZ大学の学長に、田中教授が○○とは言えない。そこで、自分はもっと広い世界が見たいと言って、「退学届」を出したのだ。アメリカの大学に行きたいと最もらしい理由を付けてである。




 婚約の解消には、倍返しが必要だが、あの婚約指輪は、どうみても50万円もしない。IT企業の社長をしている自分の父親に、前後のいきさつを、スマホで大至急、連絡した。




 父親も、元々、Z大学の卒業者である。


 自分の娘を、○○の元に置いておく筈も無い。




 こうして、明智美桜は、たった一日で、すべてのケリを付けたのだった。




 その年のノベール賞の発表で、下馬評通り、田中教授は、ノーベル物理学賞を貰った。




 しかしながら、その受賞後の講演会で、急に、意味不明の言葉を乱発する講演を行ったのである。


 この演説は、全世界に放送されたが、ここで初めて、田中教授の○○性が、世界中に知られる事になったのであるが、それはそれでまた、別の話であろう……。


 






 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スペルマ大王はかく語りき!!! 立花 優 @ivchan1202

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ