第2話 僕、ユースケ。私、ソノハ。
時間を見ると学校の時間だった。
俺は階段を駆け上がり、制服に着替えた。
携帯電話に着信が5件と彼女からのLINEが3件と謎の動画が保存されていた。
俺は怖いもの見たさで、謎の動画を開いた。
時間は大体30分程度だろうか。
俺が映っていた。
俺は台所に散乱した割れた皿を映して言った。
『あーあ、こんな時に眠るなよ。片すのは僕なんだからさ。あっ、これ撮れてるかな。タイガ、初めまして。ユースケです』
それから、皿を片付ける俺がいた。
でも、俺じゃない。
ユースケって誰だよ。
俺の顔してユースケって誰なんだよ。
一通り片付いた後に、ユースケはガクンと膝から崩れ落ちた。
1分くらい経った頃だろうか。
周りを見渡して携帯に手を振る雰囲気が違う俺がいた。
そして、話し出した。
『私ね、料理好きなんだ。お母さんとお父さん喜んでくれるかな。スクランブルエッグ作りたいと思いまーす。あっ、私の名前はソノハ。タイガ、よろしくね』
ふふふふんって、鼻歌混じりにスクランブルエッグを作った。
ソノハは『出来た』と言って、カメラをフライパンに乗ったスクランブルエッグに向けて、ピースをして動画は終わった。
俺は分からなくなった。
何が俺の中で起こってるのさえ、分からなかった。
そんな動揺をよそに、携帯に電話がかかってきた。
相手は彼女からだった。
電話を取ると、彼女は甲高い声で話し出した。
『もしもし、タイガ? 今日は学校来ないの? タイガが居ないと困るよ、ねえ、タイガ聞いてるの?』
俺は何を言ったら良いか分からずにいた。
そんな時に心の中から声がした。
『ねえ、僕が代わるよ。タイガは休んでなよ』
そんな言葉と同時に眠気が襲い、30秒ほど経って、ユースケが『もしもし』と言った。
『あっ、もしもし。俺さ、今日は家族が派手にやっちゃって、家族の面倒見なきゃ行けないから、今日は行けないや。まじ、ごめん』
そう言って、電話を切るとユースケは私服に着替えて、帽子を深く被り、勉強机の1番下にある引き出しの鍵を開けて、1台のスマホを取り出して、2階から足音を立てずに家を出た。
向かった先は、公園だった。
公園のベンチにいたのは、学校に行くことのできない子たちだ。
そのうちの1人が手を振るように駆け寄ってきて言った。
『ユースケくん、待ってたよ。今日は何の教科教えてくれるの?』
ユースケは答えるように言った。
『今日はこないだの続きで、英語の授業しようか。みんな、携帯は持ってきたかな? じゃあ、いつものアプリ開いてね。小テストも兼ねてやってみてくれるかな? 分からないことは僕に聞いてね』
3〜4人の生徒をユースケは束ねて、勉強会をしていた。
2時間ぐらいが経った頃に、ユースケが言った。
『じゃあ、みんな今日はこの辺で終わりにして、また来週会おうか』
すると、生徒たちは礼儀正しく『ありがとうございました』と一礼した。
そして、足早に家にユースケは帰った。
ドアを少し開けると静かだったので、そっと扉を閉めて、2階へと行き、勉強机の下にある引き出しに電源をオフにした携帯電話を入れて、鍵を閉めて、その鍵を宝物箱の中にしまってベットの下へと隠した。
そして、電池が切れるようにベッドに横になって眠った。
起きると時間が何時間も経っていたことにタイガは気がついた。
でも、何をしていたのか覚えていなかった。
何でさっきまで制服だったのに、私服なのかさえ分からなかった。
彼女からのLINEでさえ、意味がわからなかった。
『タイガ、明日は学校来るの?』
そのLINEを見て今日学校に行かなかったことを知った。
また、おかしな現象が俺の中に起こっていた。
忘れちゃってごめんね、分からなくてごめんね。 ソノハナルーナ(お休み中) @eaglet
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