元カノからBL小説を書けと脅迫されています

朽木桜斎

第1話 深夜2時、元カノからの電話

翔太郎しょうたろう、あなたはこれから、BL小説を書かなくてはならない……!」


 ジョジョ第2部のリサリサ先生よろしく、元カノ・黒崎華くろさき はなは俺・御器所翔太郎ごきそ しょうたろうにそう「命令」した。


 深夜2時、スマホの通話ごしにである。


「セーラームーンの男子版が読みたいわね。男子ならそう……ジャージ、ジャージがいいわ!」


「な、何を言って……」


「メインキャラクターは5人、色分けが欲しいわね。青・赤・黄・紫・ピンクかな~」


「ちょ、ちょっと……」


「名前はそう……正義のジャージ戦隊・カラーズ、これだわ!」


「ま、待ってってば。いったい全体どういう?」


「だ~か~ら~、わたしのためにBL小説を書けっつってんだろこの腐れ脳みそがあああああっ!」


 またジョジョで聴いたことのあるセリフが飛び出す。


「ジャージ戦士たちがあ~んなことやこ~んなことをされてしまうBL小説、これが完成したあかつきには、翔太郎、あなたの悲願は天高く果たされるでしょう。すわなち、夢にまで見た作家デビューよ。そのときあなたは、ああ、もはやワナビではないのだ」


 彼女はすっかり自分に陶酔しているようだ。


「しからば、書きなさい。迷わず書けよ、書けばわかるさ、バカ野郎っ!」


「あの~、俺一応、男なんですけど……」


「元気ですかあっ!?」


「話を聞け!」


「なに? 断るってゆうの?」


「……」


 彼女は急に、低いトーンの声になった。


「翔太郎、わたしはあなたに頼んでいるんじゃない。命令しているんだよ・・・・・・・・・? すでにね……」


「……」


「さ、わかったら書きましょ、にこにこ」


「マジで、やるの?」


「ゆー・はど・べたー・どぅ~いっ! BLを書くか、それとも死ぬかよ」


「デッド・オア・アライブ!?」


「あ~、わたし明日早いから、もう寝るね。24時間後にまた電話するから、そのときまでにプロットを用意しておくこと」


「そ、そんな、俺だって明日は、仕事が……」


「つべこべ抜かすなあっ! 〇すぞコラあっ!」


「ひっ――」


「ちゃんとやっとかんと、わたしとするときに××に××を××ていたことをネットに――」


「わあっ、わあっ!」


「ふん、この黒崎華さまが気づいていないとでも思ったか、ああ?」


「わ、わかったから。言うとおりにするから――」


「ならよろしい、じゃあしっかりやっとけよ。この××××××××が」


「ううっ、あんまりだ……」


「よろぴくね~」


 ブツっ、プー・プープー……


「何が起こってるんだ、いったい……」


 こうして俺は、元カノから脅迫されるという形で、なんとBL小説を書くことになったのである。


 とりあえず、一発抜いておこう。


 はあ……

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