間借りの幽霊

ボウガ

第1話

ある部屋に女性の幽霊がでると、霊能者に依頼がはいった。

随分有名な霊能者だったが、依頼をえり好みすると話題だった。その選別方法もわからない、報酬が高い低いといった法則性もない。


早速その霊能者は、その幽霊の調査に躍り出る。最初のうちは成果がでずに、幽霊と接触できない、しびれをきらした霊能者は、そこに数日とまることにした。その数日で起きた出来事である。


 その間に資料を漁った、この幽霊はどうやら他の場所でも目撃情報がある。しかし、そこに規則性はなく、まるで〝迷っている〟かのようだという。


1日目、奇妙な物音やものがひとりでに動くことはあれど、大した霊障なし。

2日目、うっすら女の幽霊の姿がみえるようになる、だが女は、怖れられるほどの悪意を感じないすがただった。なにせ見るからに真面目そうで清楚な感じのロングの女で、ある個所意外は特段特徴もなかったことだ、それは両目を閉じていることだった。

3日目にしてようやく霊能者は“テレパシー”によって会話をする事ができるようになった。女は“ある理由である男を恨んでいるのだ”という、生前はそんな事はなかったが、死んでから恨むようになった。

4日目、女は、すべての事情を話してくれた。彼女は付き合っている恋人がいたのだが、その彼が女が失明をするのを機に、いなくなってしまったという。失明の以前から、女は男に避けられていると感じていた。そんな世界にはまるで関係ないまじめなサラリーマンだった彼が、ホストの友人ができてから、彼とずっとつるむようになって、女は勘づいた“他に女ができたのかもしれない”


翌日、女が連れて行ってほしいという場所に女をつれていった。その県の有名なデートスポットで街が見下ろせる小高い丘にあった休憩所。そこで町を見下ろす。女はいった。

「私、恨んでいなかったのかもしれない、目が見えなくなるとわかって世界の全てが暗くみえて、周りの人が助けてくれたけれど、彼はいなくなった、最後に一度だけ、あの人の姿をみてみたかったのかも、きっとそばにいるだけで、世界の形がはっきりみえたと思う、私にとってあの人は、世界そのものだから、ありがとう、もし彼にあったら、このことを伝えてね」

 そう言い残し、幽霊は消えた。霊能者は涙を流していた。女を始めてみたときから、はっとすることがあった。女こそ、彼の初めて付き合った相手なのだ。


 彼は言えなかった。自分の霊能力を彼女に隠していたこと。そして、その霊能力が強くなるごとに、自分の傍に幽霊がよってきたこと。彼女が目を悪くしたとき、悪い霊が彼女の背中についていた。それを払う方法を探し、偶々であったのがその時ホストをしていた自分の霊能者としての師匠だったこと。彼はいった。

「あれは俺にも払えない、誰にも払えないだろう、だがお前にはポテンシャルがある、俺の元で修行すれば、彼女を解放してやれるかもしれない」


しかし彼が、修練から戻るときには、彼女はすでに悪霊の手によってか他界していた。そしていま、亡霊となった彼女にであった彼はおいていた。あれから、20年もの年月がたっていたのだった。



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間借りの幽霊 ボウガ @yumieimaru

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