時間、大人。ボウフラ。洗顔。そして気付き。あらゆる短編

木田りも

小説。 時間、大人。ボウフラ。洗顔。そして気付き。あらゆる短編。



・最初で最後の導入。

 自意識が繁殖している。

薄暗い夢を見た翌日のこと。本当は難しい単語を羅列した小説を読んだりして自分にも書けないだろうか考えたし、売れる方法を考えて、もっと自分らしくない本を書いたりしようかなんて考えたのだが、気分じゃない時にそんなことをすべきではない。いつ雨が降ってもおかしくないような天気が続いていて、刻一刻と、休憩時間は減っていく。明らかなのは、気分が憂鬱なこと。怠惰な日々を過ごし、次の予定までまるでサナギのように静かに過ごしているということ。こんな風な毎日を望んでいたか、こうなりたいと願っていたか。いつからこんな風に諦めるようになったのか。時間旅行ができるならいつからなのか確かめにいきたい。僕はいつから、大人になったのか。ここから進めるか。


・作者の介入。

 元気な時に暗い話を求めるという話を聞いたことがあるので今、暗い話が書けるということは元気なのではないかと錯覚することがあるがそんなことはない。とどのつまり、諦めているだけな気がする。しかし共存なのではないかとも思う。自分語りは嫌いだから作品に戻そう。僕が介入する時間は無駄だ。


・流れてる。

 雑に利用している。時間とは有限で有るにも関わらず、雑に消費している。このままどっか閉鎖的なところへ行けたらなんて思う。日常が嫌いだ。続いてる毎日が嫌いだ。追い込まれてるのが分かっている。あと一歩行ったらダメなラインのすこし上のキープ。

何かが切れたらすぐに終わってしまうのが分かっているからこそ、落ちれない。そんな場所で流れてる川のように美しい景色を見てる。この泥で溢れた川の中。ぬかるみはどこまで行ってもぬかるみだ。ワインに一滴の毒が入ればそれはもう飲めないのだ。明るい世界、希望、そんなもの全てに腹が立つ。消えてしまえばいいのに。服の汚れは静かに僕を見ていた。


・洗顔。

 義務のように体を検める。それはささやかな抵抗だ。この世で生きてやるという抵抗。不潔はいけない。清く正しくありたいという世の中のステレオタイプを知ってるからこそ蟻地獄なのだ。僕はいつになったら「自分らしく」生きられるのかそんなことを模索している。ただの燃え尽き症候群だと信じたい。少し前に大きなイベントが終わったのだ。命を張って作っていた。体調が崩れるほどに。限界を迎えるまで。ストイックにぶつかっていたからだろうか。甘えとか遊びとか、そんなものを潰していた。アルコールも控えたし、読むものはそれだけにしたし、生活からその人になろうとしていた。だからこそなのだろう。満足が出来ないのは。あんなに頑張ったと思えるのに自分のやったことはなんてつまらないのだろうとまで思ってしまうのだ。理想を求めるつもりが、理想からかけ離れていっている現実が嫌だ。洗って、洗って、洗い流して、捨てて、捨て尽くして、飲み尽くして、尽くして、尽くして、尽きたのだろう。たぶん尽きるってまあまあ怖いことなのだ。尽くすのやめよう。心に決めた。


・余力。

 時間は有限なんだ。時間は無駄なんだぁ。

時間って有限だ。有限である。有限……

有限、、、実行?実行しなきゃね。


・12345。

  地下鉄から上がってきて、階段登るじゃないですか。同じタイミングで上がってきた人たち5人くらいまっすぐ、そうだな、ドラクエみたいに並んでてさ、歩幅とスピードが一緒で、歩き方と出す足が一緒だからさ、軍隊みたいだなって思ったわけよ。それくらいかっこよく、潔く、生まれて、生きて、死んでいきたいね。


・0。

  同じ地球上で、今、戦争が起きている。

同じ地球上で、今、愚痴を話す。飲み放題の居酒屋で。同じ地球上で、平和に眠っている。同じ地球上で、過労死している。空が繋がっていて、時差があるだけ、海を隔てているだけ。時間が勝手なのか。同じ地球上で、将来偉くなるためにめんどくさい塾に通っている。同じ地球上で、信号待ちをしている。同じ地球上で、同じ人間が。


・あらゆる事象。

 信号が青に変わる。そういえば女性のタクシードライバーが増えた。古くからあった定食屋が潰れた。スマホの充電が減ってきて、鼻風邪を引いた。久しぶりに文章を紡いでいる。前の人の傘の先が危ない。自動ドアが思った通りに開く。停電していて周りが見えない。隣を誰かが通った。気がする。過去?カッコカッコカッコカッコ、信号はカッコウの鳴き声を刻む。いつも通り起きている事象。現実、これが現実!嫌というほど現実!!

信号待ちをしている。


・全てをまとめる統率者。

 私がこの役を、いや、大役を演じるにあたって、準備しなければならないことがある。あらゆるもの、人、現象に備えて用意しておくことだ。未来とは常に進み続けている。1秒後には永遠に辿り着けないのだ。まだ終わるには早すぎる。立て、立ち向かえ、現実だ。これが現実だ。ハッピーエンドとはいかないから現実なんだ。きっとそれが面白いんだ。辞めるな。逃げるな。

いや、逃げようか。

逃げちゃおうか、抜け出しちゃおうか。

(今までならここで終わってたな)

どこかから声が聞こえて、もう少しだけ僕はこの文章を続けようかなんて思うのだ。


・捻挫、挫折。

 どんなタイトルだよって思うだろうがポジティブな話である。僕は先日、心の中で全てを投げ出した。心の中だけだ。表には何も出していない。全てを投げ出したことをチーフは分かっていて、チーフになら何か導いてもらえるのではないかと思った。期待は確信になった。自分が自分の意思で投げ出し、遠くにやってしまったもう拾わないと決めようとしたものも、また拾おうという気になった。救いだった。挫折があったから乗り越えた。らしい。それを聞いてなんか少しだけ笑った。だってこんなすごい人でもそんなカッコ悪い部分があるんだって。笑った。そして、以前にもまして尊敬した。頑張ろうって思えた。頑張ろうというより頑張りたい、まだやりたいことがあるってなった。深夜に寝落ちから起きる生活が繰り返されていた毎日を止めるストッパーは身近にいるものなのだ。人に恵まれた。本当に恵まれた。だから、


・ここまで。

 大人になりたかった高校生の僕がいたんだ。なってみたら戻りたがってる自分がいたんだ。どっちも本当だからさ、まあ、仲良くしてくれや。笑っちゃうくらいバタバタしてる毎日だけど、たぶん高校の時よりも大きくなってるから安心してね日々を過ごしてくるんだよ。後悔は全て繋がってるし、失敗も繋がってるから。忘れられないし、悔しいし、記憶から消したくなるけど、全てまとめて僕だから。今は愛しいよ。全てが。これはあの頃に向けての乾杯なんだ。ありがとよ。(酒を飲んで寝落ちする)


・明くる朝。

 明日の朝、地下鉄に揺られてる。

いつものように。同じように。

朝のだるさと。本当に少しの。

あるかないかわからない、

わずかな希望を持って。






おわり。





あとがき

 自分で自分を追い込む人間なのは、もう何度も経験しているはずなのに今回も今回が1番と言わんばかりにつらかった。明確にこれがつらいとかではなく、上手くいかないちょっとしたことの連続、人生の不安、このままどうなっていくのか、ゆくゆくは死ぬだけだろう?、でも具合悪くなってるの嫌だ、急性胃腸炎、など、いろんな不安要素に溢れた毎日だった。1人暮らしという状況は、自由で不自由であるし、頼りたいときはどうすれば良いかわからなくなる。人への甘え方、接し方、いわゆるコミュ力が皆無だから声が出ない。こうなりたい自分と、こうしてはいけない自分。あと、甘えてはいけない自分。ひいてはここまでは甘えて良いけどここからは甘えだよね?って言われる塩梅。そういったものがいまだにわからない人生を送ってしまったから起きたことである。しかし、そういったものがわからないからこれを文章にして、こんな小説が書けるのだと思うと、皮肉的で、面白い人生だなって思う。器用に生きている人、イケメンとかをみて嫉妬する毎日だけど、自分に嫌いな部分が多いけど、それでも僕はこんな自分なんだから、強気で生きていきたいなんて思う。だってこんな風に希望を抱ける作品を書けるようになったのだから。怖い毎日だったけど、共に生きていけるように、仲良くなっていけるように歩み寄っていこうと思う。


ここまで読んでくださりありがとうございます。本当に感謝します。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時間、大人。ボウフラ。洗顔。そして気付き。あらゆる短編 木田りも @kidarimo777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ