第24話 ペン子、目的地を発見する

「……ふわぁ~」

 

 辺りを気にすることなく、ペン子は大きく口を広げながら欠伸をする。


 ルナリア王国を目指し、航海を再開してから1週間。

 ペン子たちは、死線領域デッドラインを無事に抜け、東海域まで進むことが出来た。

 ここまで魔物に遭遇することなく辿り着けたのは幸運だったとしか言えないだろう。

 幸運なのだが……。


「おじさん~まだ着かないの?」

「かなり近づいているのは間違いないんだけどな、こればかりは俺にも分かんねえな」

「じゃあ、何か面白い話でもしてよ~」

「無茶を言うなって、嬢ちゃん」


 何事もなく過ぎていく日々。

 クラーケンとの戦闘から一転して平和な航海に、ペン子は暇を持て余していた。

 あまりに退屈だったので調理室に突撃してみたものの。

 先ほど朝食を食べたばかりのこの部屋でやることと言えば、洗い物を出際良く片付ける食堂のおじさんを眺めながら、とりとめのない話をすることくらいだった。

 

「おじさ~ん、お水が欲しいよ~」

「悪いな。貯蔵水は残り僅かしかないんだ、我慢してくれ」

「うう~っ……このまま私たち、干乾びて死んじゃうのかな……」


 額の汗を拭いながら、そのまま体を机に突っ伏す。

 

「大丈夫だって。人間、水を数日飲まなくったって死なねえらしいからよ! がっはっは!」

「私はペンギンなんだってば~」


 ペン子は心底疲れ切った声で反論するが、高らかに笑うおじさんの声でかき消されてしまう。

 このやり取りも、これで何回目ぐらいだろうか。

 そんな風にぼんやりと考えながら、力なく突っ伏していると、その時――

 

「ペン子様!」


 調理室の扉が勢いよく開かれ、可愛らしくも清楚で高貴な雰囲気の少女が現れる。

 フィエナだ。

 お淑やかな彼女にしては珍しく、少し息を切らし、慌てた様子でペン子を呼びかける。


「どうしたの、フィエナ~?」


 彼女の呼びかけに、熱でフニャフニャに溶かされたスライムの如く、脱力しきった声で返答する。


「見えてきましたわ、私たちの国が!」

「ホント!?」

 

 フィエナの言葉を聞くや否や、待ってましたと言わんばかりに顔を勢いよく上げた。

 先ほどまでのローテンションが嘘だったかのように、ペン子は瞳を輝かせる。


「はい、ですから是非……」


 フィエナがそう言いかける。

 が、そのまま彼女の言葉を待つまでもなく。

 フィエナの横を通り過ぎていったペン子は、元気よく甲板へとすっ飛んでいく。

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ペンギン無双物語~島から追放された自称ペンギン少女、最弱だと思い込んでいたら人間失格レベルのチートでした~ 蒼野ソラ @ksk0123

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