第251話 テントを準備する

 膨らむ期待。どうやらローランドくんとミューも期待が膨らんでいるようである。そんなボクたちを見て、アルフレッド先生がニッコリとほほ笑んだ。


「それでは、近場ではありますが、森へ行って野営の練習をすることにしましょうか」


 そうして近くの森で、みんなでキャンプをすることが決まった。ニャーゴさんや、アリサさん、ワンダさんも一緒に来てくれるようである。みんなが一緒なら、心強いね。

 いつも働いてもらっているので、こうしてみんなで一緒に楽しむのも、たまにはいいのではないだろうか。




 翌日、屋敷の玄関前にはみんなの姿があった。


「みんな、準備はできましたか?」

「バッチリよ。近くの森とは言っても、何が起こるか分からないものね。気を引き締めて行かなくちゃ」

「そんなに危険なの、アリサさん?」

「念のためよ、念のため」


 ちょっと怖いな。もしかして、ローランドくんを狙っている人が来たりしているのかな? そんな話はまだ聞いたことがないんだけど。

 それどころか、ノースウエストに不審者が来たという話すら聞いたことがない。やっぱりこんな辺境の地まで、変な人がやってくることなんてないよね。


「それでは出発しましょうか。近くなので、目的地までは歩きになりますよ」

「分かりました」

「こんなとき、マジックバッグがあると本当に便利だな。手荷物が必要最低限ですむ」

「本当だね」

「ミュ!」


 ローランドくんが腰からぶら下げているマジックバッグをポンとたたいた。手には護身用の剣を持っていて、背中には小さなリュックを背負っている。ボクと同じスタイルだ。


「リディルくんにも、そろそろ本格的な剣が必要でしょうね」

「アルフレッドがそう言うのなら、そうなんだろうな。坊主もついに、アルフレッドに認められたということか」

「本当ですか? やった!」

「ミュ!」

「いいなー、俺もアルフレッド師匠から剣をもらいたい」


 ちょっとうらやましそうな顔をしているローランドくん。アルフレッド先生が選んだ剣なら間違いないだろうからね。どんな剣になるのか楽しみだ。ローランドくんにも記念に剣をプレゼントしたいところだね。


「デニス、剣を作るのが得意なドワーフを紹介して下さい」

「おう、任せとけ。俺も作れるが、名剣を作れるかと言われれば、ちょっと自信がないからな」

「お兄ちゃんがそんなことを言うだなんて、珍しいッス。これは今夜は雨が降るかもしれないッス」

「それじゃ、雨が降っても大丈夫な場所を選んで、テントを準備しないといけないね」

「おいおい、ルミナ、坊主、冗談だよな?」


 みんなで笑いながら森を進み、目的地へと到着した。もちろん天気は晴れなので、夜に雨が降ることはないだろう。もちろん、雨が降ったときに備えて、雨の中でも問題ないようなキャンプの練習をする必要があるけどね。


「この場所が今日のキャンプ地点ですよ」

「少し開けた場所ですね」

「そうですね。最低限、このくらいの広さがあれば、テントを準備して、キャンプをすることができますよ」

「なるほど」


 地面に穴を掘って、そこを仮の宿にすることはもちろんできる。でも、魔力がなかったり、地盤が穴を掘るのに適してなかったりした場合は、テントを張って寝ることになるからね。

 キャンプ地の場所の確保は重要である。


「それじゃ、まずはテントの準備からだな。簡単に組み立てられるテントにしてあるから、坊主たちでも張れるはずだ」

「よーし、がんばるぞ」

「テントを張るの、ちょっと楽しみだったんだよな」


 そうしてデニス親方に教えてもらいながら、ローランドくんと一緒にテントを張った。さすがに投げて完成するテントではなかったけど、それでも子供のボクたちだけでも、問題なく張ることができた。


「テントが飛んで行かないようにするためのこのクイを打つのが難しいね」

「大きなハンマーをマジックバッグに入れておくべきなのかもしれないな」


 そうして必要そうな物をメモしながら作業を進めていく。ボクたちが張ったテントは、詰めて寝れば四人くらいが寝ることができる広さである。そのため、今日はボクとローランドくんが張ったテントに、みんなで別れて寝ることになっている。


「さすがにお風呂に入るのは無理そうだね」

「お湯を浴びるくらいならできますけど、何があるか分からないときは、体を拭くだけにした方が無難ですね」

「分かりました。それでは次はかまど作りですかね?」

「そうしましょうか。これも魔力を使わずに、自分たちの手でやりましょう」

「その方が勉強になってよさそうですね!」


 そこからはみんなでかまどを作ることにした。いい感じの石を集めて来てから、土をこねて、組み合わせた石のスキマを埋めていく。精霊魔法を使えばすぐなのに、自分たちの手でやるとなると、やっぱり大変だね。


「これで完成かな?」

「一つ目は完成ですね。人数によっては、いくつも作る必要がありますよ」

「思ったよりも大変ですね」

「リディル様、さっそく次のかまどを作ろうぜ!」

「元気だね、ローランドくんは」


 顔が生き生きしている。きっと以前からキャンプをやりたかったんだろうな。その念願がかなって、テンションが上がっているようである。

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世界樹の守り人 えながゆうき @bottyan_1129

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