第250話 姿を変える魔道具を作る

 コボルト族の歓迎会は大盛況のうちに幕を閉じた。本当は人族も交えてやりたかったんだけど、コボルトさんたちの姿はまだ見せない方がいいだろう。そのうち交流が進んだところで、少しずつ、慣れてもらいたいと思っている。

 そのときには、ケットシー族のみんなも、本来の姿で、町の中を歩くことができるようになっているはずだ。


 翌日からは、さっそく姿を変える魔道具を作り始めた。でも、ボクとローランドくんが一個ずつ、作りあげたところで、必要な数がそろってしまった。

 歓迎会のお礼だと言って、ドワーフさんたちだけでなく、エルフさんたちも作ってくれたんだよね。


 まあ、お酒の備蓄がなくなってしまったんだけどさ。そのため、しばらくは宴を開催することはできないだろう。しっかりとお酒を蓄えておかなければならないな。

 コボルトさんたちの家も、ドワーフさんとエルフさんたちが作ってくれるそうである。もちろん、コボルトさんたちも手伝うつもりみたいだ。


 あのイヌのような手で、器用に道具を持って家具なんかを作っているんだよね。すごい。実は手先も器用なようで、ドワーフさんたちにほめられていた。

 コボルトさんたちはもちろん警備も担当してもらっている。大半のコボルトたちがこちらで働いているようだ。今も妖精さんたちと協力して、ノースウエストの外からくる人たちをひそかに監視してくれている。本当に助かるね。


「姿を変える魔道具を使っても鼻が利くんだね。すごいや」

「ミュ」

「ねー」


 そんなことをミューと話していると、その秘密についてアルフレッド先生が教えてくれた。


「まあ、見た目を偽っているだけですからね。本来持っている特徴はそのままですよ」

「そうなのですね。魔道具って、なかなか奥が深いですね」


 どうやら魔道具には、通常使っている機能以外にも、見えないところで別の機能があったりする物があるようだ。マジックバッグにも別の機能があったりするのかな?

 そう思って聞いてみると、どうやら時間停止や、容量拡張は、それらの特殊な機能の一つだそうである。


「魔道具の作り方を極めるのは難しそうですね」

「そうだぜ。だからこそ、面白い!」


 デニス親方がニヤリと笑っている。その隣では、ローランドくんが同じような顔で笑っていた。


「リディル様、完成したぞ。火をつける魔道具だ」

「おめでとう、ローランドくん。ボクはまだその魔道具を作ったことがないんだよね。さっそく使ってみようよ」

「そうだな。試してみたい」

「それでは調理場のかまどに火をつけてもらうことにしましょう。それでお湯を沸かして、みんなでお茶を飲むことにしましょうか」

「賛成です!」

「ミュ!」


 ローランドくんが作った魔道具は問題なく作動して、カチリという小さな音と共に、小さな火をともした。それを使って薪に火をつけてお湯を沸かし、みんなでお茶を飲む。

 いつもと同じはずなのに、どこかおいしい気がするのは気のせいなのだろうか?


「リディルくんが作っている、マジックバッグの進み具合はどうなのですか?」

「もうすぐ完成しますよ。これで食べ物をこれまでよりも長く保存することができるようになりますね」

「それではリディルくんのマジックバッグにも、保存用の食料も含めた、非常用の装備を入れておくのがよさそうですね」

「そうだな。これから先、何が起こるか分からねえからな」


 デニス親方がうなずいている。ボクとしては非常用の装備が必要かどうかについてはあまりピンと来ないのだけど、アルフレッド先生とデニス親方がそう言うのであれば、準備しておこうかな。フェロールもうなずいているし。


「俺のマジックバッグにも非常用装備を入れておいた方がいいかな?」

「多分その方がいいと思うよ。それじゃ、一緒に準備をすることにしようか」

「そうだな、そうしよう」

「その前に、まずはボクのマジックバッグを完成させないといけないね」


 そこからは全力でマジックバッグ作りを行ったこともあり、それほど時間をかけることなく、完成させることができた。

 マジックバッグが完成したところで、さっそく必要な物を入れていく。テントや寝袋だけでなく、薪なども入れておいた。もちろん保存食も。


「これでひとまず必要な物はそろったかな?」

「そうだな。でもなんだか、ちょっとワクワクするな。なんだかこれから冒険に行くみたいでさ」

「確かにそうだね。実際に使う練習とか、やってみたいかも」

「ミュ!」


 やってみたいな~、キャンプ。前に領都へ行くときに、野営をしたことがあるんだけど、そのときは急ぎだったから、楽しむ余裕はなかったんだよね。寝るのも馬車の中だったし。


 キャンプに行くのならば、間違いなくみんなで行くことになる。だからソロキャンプは無理だろうけど、それでも楽しそうだよね。ボクの意見に賛成なようで、ローランドくんが何度もうなずいているな。


「練習か。確かに必要かもしれねえな。どう思う、アルフレッド?」

「そうですね、いざという時に道具だけがあっても、使い方が分からなければ意味がないですからね。一度、実際に使ってもらう必要があるでしょう」

「それじゃ!?」

「もしかして!?」

「ミュ!?」





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