第19話【遭遇】

「うまー!」


ゲーセンで遊び尽くした後、私達は近くのファーストフード店で食事をしていた。

鳳鞠君は元々ゲーセンが好きらしくそのゲーセンで私とデート出来た事が嬉しかったようで満足そうな笑顔でハンバーガーを頬張っている。


「それにしても本当にそんなところに貼っちゃうなんて…」


「何の話?」


「プリクラよ、プリクラ。」


先程ゲーセンで撮ったプリクラを2人で分けた後、鳳鞠君はすぐに自分のスマホケースに貼り付けていた。


「しかも♥ラブラブ♥って書いてたやつだしこんなの誰かに見られたら…」


「えー、別に良いじゃん。婚約者同士なんだし。」


「そうだけどまだ結婚するって決まったわけじゃないし…」


「俺は羽闇と結婚するつもりでいるんだけどなー、今すぐにでも出来ちゃうよ。」


「まだ知り合ったばかりでそれは早いって。」


私は鳳鞠君の天然ぶりに苦笑いを浮かべながらコーラを一口含む。

鳳鞠君って周りが恥ずかしくて言えない事をしれっと言っちゃうとこあるよなぁ…。


「てかさー、羽闇の好きなタイプってどんなの?」


「えっ、何いきなり」


「だって羽闇はどんなタイプの男が好きかっていうところで色々変わってくるじゃん。俺だって羽闇の好かれる男になりたいし。」


「好きなタイプ…っていうか」


「ふんふん」


好きなタイプも何も正直なところ私は夜空君が好きです、なんて言えない…!

鳳鞠君は興味津々といった様子で見つめてくる。

私は顔を赤らめながら下を向いて口籠っていると後ろからの聞き覚えのある声が聞こえた。


「あれ、羽闇…?」


「そ、青空にぃ!?」


「青空にぃ、何でここに…?」


「何って…見ての通りバイト中だけど。」


青空にぃの姿を見てみるとファーストフード店の制服を着ていた。高校の頃からアルバイトをしているのは知っていたが此処のお店で働いていたようだ。


「あ!てか羽闇!お前いつの間にアパート引き払ってたんだよ!?部屋に訪ねても誰も居ないし、親父達に聞いたら最近お前の祖父って名乗る爺さんと使用人みたいな男がうちに来て羽闇を引き取る手続きをしに来てたって…」


「アハハ…色々と事情がありまして…」


青空にぃは月光家の事を詳しく聞かされていないようで彼にどう説明すればいいのか分からずに困っていると、青空にぃは私と向かい合わせにテーブルに座っている鳳鞠君に気付いたらしくそちらに視線を向けた。


「その子、羽闇の友達か?お前に年下の友達がいたなんて知らなかったな。」


「あぁ、うん。この子は―…」


「火燈鳳鞠、羽闇の婚約者だ。」


鳳鞠君はムッとした表情で席を立ち上がり、私を抱き寄せながらそう告げた。

婚約者というワードが他の客からも聞こえてしまったらしく周囲は少しザワつき始める、鳳鞠君は元々格好良い顔立ちをしている為デートの最中も女子達からの視線は痛かった。


「は?婚約者…?」


「羽闇、もう食べ終わったしこれ以上はお店の迷惑になるかもだからそろそろ出ようか。」


「え、待って…まだ青空にぃに…」


何も説明できてない。

鳳鞠君は私の手を引いて出口へと向かっていく、先程まで明るかった鳳鞠君とは打って変わって無表情で冷たい雰囲気を漂わせている。

私は青空にぃの方を振り向くと彼ははぽかんとした表情のまま私達を見つめていた。

私は青空にぃに手を挙げてごめんと合図を送り、そのままお店を出ていった。


「羽闇の婚約者…?一体どういう事だ?」


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【月の婚約者】誰を選べばいいかわかりません!! 紫桜みなと @hayanin

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