第18話【放課後】

数日後。

放課後となり私は学校の校門前ではある人を待っていた。

その相手というのは―…


「羽闇!お待たせー!」


遠くから声が聞こえそちらへ振り向くと向こうから息を切らしている鳳鞠君がこちらに走ってくるのが見えた。

先日のジャンケン対決、勝ったのは鳳鞠君だった。

そして今日は鳳鞠君がリクエストしていた放課後デートの約束をしている。

なのでいつもは下校時間になると壱月が車で迎えに来てくれているのだが今日は断ってある。


「こっちから誘っておいて待たせてしまってごめんね。」


「ううん、私もさっき終わったばかりだから大丈夫だよ。それに鳳鞠君の通う学校からも少し離れているから仕方ないよ。」


「まぁそれもあるけど部活の助っ人頼まれてしまって断るのが大変だったんだ。」


「鳳鞠君部活してるの?」


「ううん、俺は帰宅部。体動かすのは好きではあるけスポーツにそこまで興味が無いというか…」


鳳鞠君は複雑そうな表情で頭を掻いている。

部活の助っ人を頼まれる位なんだから運動神経が余程良いのだろう。

気を取り直そうとしているのか鳳鞠君は私の手を繋いで先程の表情とは打って変わって明るい笑顔を浮かべた。


「そんな事より!俺今日のデートずっと楽しみにしてたんだ〜!」


「放課後デートしたいって言ってたよね。何処に行くか決まってるの?」


「勿論!頑張って羽闇を満足させるから楽しみにしてて。まずはこっちだよ!」


「え、ちょ、鳳鞠君!?」


私は鳳鞠君に手を引かれたままの状態で走らされデートの場所へと向かっていく。

やはり運動神経が良いらしく彼のスピードについていくのがやっとだった。

そして暫くすると近くの商店街へと入っていき、目的の場所へと到着したのか足を立ち止まらせる。


「到着〜!」


「ぜぇ、ぜぇ……鳳鞠君、走るの速すぎるよ…」


「ふぇ?あ、ごめん羽闇!大丈夫!?」


「な、何とか…鳳鞠君は疲れてないの?」


「俺は学校が終わってからよく走ったりしてるから。これでも加減してたんだけど…本当ごめん。」


あれで加減してたんだ…あんなに走ったのに息切れ1つしていないどころかケロッとしている鳳鞠君は本当に凄いと思う。

鳳鞠君はペースを合わせられなかった事に落ち込んでいるのかしゅんとした表情を浮かべるが私はそんな彼の気遣いが嬉しく思い、そっと頭を撫でた。


「大丈夫、久し振りに走ってちょっと疲れただけだから。それよりここって―…」


「見た通りゲーセンだけど。もしかして行った事ないとか?」


到着したその建物を見上げてみると、どこにでもあるような普通のゲームセンターだった。

此処ではないが、たまに向日葵と陽葉と一緒にゲーセンに行っている。だが私と陽葉はゲームがあまり得意ではないので基本向日葵の付き添いとして来る事が多い。


「いや、普通にあるけど。此処でデートするの?」


「うん!放課後デートといえば最初はゲーセンかなって思って。俺ずっと羽闇とやりたかった事あったんだ〜!入ろ入ろ!」


鳳鞠君に背中を押されて私達はゲーセンへと足を踏み入れる。

中に入ると色んな学生服を着ているのグループがあちこちに散らばりクレーンゲームやガンシューティングゲームに夢中になっていた。

鳳鞠君は私の手を引いて店内の奥の方へと進んでいきプリクラコーナーに立ち止まった。


「プリ、クラ?」


「へへっ、実はさっき言ってた羽闇とやりたかった事っていうのがこれなんだ。プリクラって撮った事なかったから希望しておいて何もわからないなんて格好悪いと思って事前に試しておきたかったんだけど、基本男子禁制らしくてせめて女子の同伴がないと入れないんだって。どうかな…?」


鳳鞠君はおそるおそるといった様子で私へ視線を向ける。

プリクラ機の側には最新機能などを紹介している看板が置いてあり、私はしゃがみ込んでその看板に顔を近づかせた。


「へぇー、最新機能も色々あるんだって。私プリクラって久し振りだから上手く撮れるかわからないけど何だか面白そう!」


「…じゃあ一緒に撮ってくれるの?」


「勿論、私も鳳鞠君と一緒にプリクラ撮りたい。それと私このプリクラ機がいいな。」


「へへ…わかった。じゃあ入ろっか!こっちだよ羽闇!」


「待って、鳳鞠君そっちは落書きコーナーだよ!あとそっちのコーナーまだ人が居るから入っちゃ駄目ー!」


照れくさそうにしながらも何処かホッとしたような表情を浮かべた鳳鞠君は、まだ中に人が居る落書きコーナーへ入っていこうとするが何とか腕を掴み取って撮影コーナーの方へと連れて行く。

この後、私達はポーズや最新機能に困惑しながらも無事にプリクラを撮り終える事が出来た。

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