第4話
「お嬢様、入出許可をいただけますでしょうか?」
「いいわ。入りなさい」
流石はこの北雪方のメイドだ。そう思わせる何かがあった。一つは急な変更に惑わず従うところだろう。
あとは、何が要因だったのだろうか。
メイドは部屋の中に入ってくると一番特徴のないテーブルの上に美味しそうに仕上げられた料理を並べていく。
ゆーのはその行動にとても満足した様子だった。
流石は私の専属メイドの一人。メイドとしてこの家を背負うのに見合う順応さと働きね。私の癖を完全に把握している。素晴らしいわね。
ゆーのがここまで言うのは…というより、思うのは絶対ないと言っても過言ではないほどのことだった。メイドからしたら静かに微笑んでいるゆーのが怖くてたまらなかっただろうが。しかし、そこは流石はプロ。全く表情も仕草も変化させず仕事を終えた。
「ベルを鳴らしていただければ回収に来ます。鳴らなくとも2時間後には回収、または交換に参ります。その際、声をかけさせていただきますが、出ない場合も奥様に確認したあと入室させて頂く可能性がございますが、よろしいでしょうか?」
「構わないわ。お母様にもそのように」
「その他のご要望もベルの方からよろしくお願いいたします。今後、ゆーの様が自室でお食事をなさる際もこのシステムで行いたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
「えぇ、いいわよ。」
「それではごゆっくりどうぞ」
メイドはゆーのの部屋から出ていった。
「ふぅ…そういえば、4歳でこの口調の子供っているのかしら…?」
きっといるわ。だってこんなにも簡単に覚えられて話せるんですもの。それか、私が特別…なわけないよね。あ、そんな訳ありませんよね。
でも、
「一人なのに話し方を意識する必要ってあるのかしら…?あぁ!お母様に早くご報告しなければ」
黒電話に近づき428と回す。
ヂリリリと、音が受話器の奥から聞こえた。
一呼吸おいて言葉を発する。
「お母様」
『あら、どうしたの?』
「少しシステムを変更したくて…ベルを鳴らしたら回収に来る形になったの。鳴らなくとも2時間後には回収、交換に来るらしいわ。その際、声をかけるそうだけれど私がねてる場合もあると思うのよ」
『そうね。最近はよく寝てるみたいだし…疲れが溜まってたら気軽に言うのよ?』
それしたら私の環境壊滅すると思うのですが…と思うゆーのであったが、何も言わなかった。
賢い人はいちいち地雷を踏みにいかぬゆえに
「その時はお母様に許可を取りに行くらしいから開けてあげてくださらない?」
『もちろんいいわよ。』
「ありがとうございます…あ」
『どうかしたの?』
興味がないこととはいえこんなに簡単に忘れてしまいそうになるなんて、とゆーのは自分の記憶力を少し疑った。
そして、そのままお母様に伝えた。
「西葉方の御子息のプロフィールと、茶会の日時を知りたいのですが」
『あぁ…もちろん。プロフィールに関してはすぐに手配するわ。あと…日程ね。日程、いつがいいとか希望あったりするかしら?』
「特にはないですね」
「ならこっちで勝手に決めてしまうわね」
「ありがとうございます。」
本来なら西葉方当主家のことを忘れるのはとてつもない無礼に当たるのだが、ゆーのは一旦知らないふりをした。
この世界、少しずるくないとやっていけない。
リメイアル 主人公補正が消えたチート能力者 幼夢 @yomucat1206
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