第4話 異世界の友達

私が村の上空に着くと、ツインテールの子は倒れていた。

女の子にかばわれていた姉弟はジリジリと近づいて来る狼達に震えながらも女の子の体を揺すっていた。


「お、おねぇちゃん起きて!早く一緒に逃げよう!」


「やばっ!ギリギリになっちゃった!」


私がそう呟いたその時、3匹の狼の内1匹が女の子達に飛びかかろうとした。

姉弟の姉が弟とツインテールの女の子をかばうように覆いかぶさった。女の子達を守らなきゃ。


『《マジカルローズ・ブルー》』


今度は青い薔薇が青い光の粒子になって女の子達の周りを漂う。

狼の爪があと少しで女の子達に届くというところで青い光の粒子が強く光って狼を跳ね返した。

その光はそのまま弾けるように消えていった。私のレベルが1だからかずっとはスキルが効かないみたい。

私はすぐさま女の子達の前に降り立った。足が着くと背中の翼が白い光に戻って青い光と同じように消えていった。


「え?怪我、してない?」


姉は自分が無傷だった事に驚き顔を上げて目の前に立つ私を見上げる。


「あなたは誰?」


私が口を開いた時、ちょうど目を覚ましたツインテールの女の子が寝ぼけたように言った。


「天使様?」


え!?天使様!?よく分かんないけど、目の前の敵に集中しなきゃ。


『《マジカルローズ・レッド》』


魔法を発動させようとしても何も起こらない。

なんで!?さっきまで使えてたのに!?慌ててステータスを開く。


『ステータス・オープン!』


ステータスを見るとMPが大幅減っていた。全部で60あった数値が残り10になっていた。

10だけだとマジカルローズは発動できないの!?


………しょうがない、じゃぁこっちで!

腰に携えられたレイピアを抜くと狼に向けて構える。


『《アビリティーアップ・オール》!からの《ソードシップ》!』


全身の強化と敵の倒し方を教えてくれるこのスキルで狼達を倒す!


「よっと」


私は右の狼に一瞬で近づき、十字に斬りつける。残りの狼が同時に飛びかかってきたけど、後ろに下がって避ける。すごい次の動きが頭に浮かんでくる!


「ちょっとぉ危ないじゃん...かっ」


ジャンプして狼達の上空に飛びあがると落ちながら剣を振り下ろす。一匹には効いたみたいで倒れたけど、もう1匹には避けられちゃった。追いかけようとすると最初に斬りつけた狼に後ろから押し倒された。最初の攻撃で倒せなかったみたい。


「ぐぅっ...」


狼に押さえつけられて、身動きができない。

でも、まだ負けれないよ!今使えるのはまだレベル1の魔法で、相手を傷つけるほどの力は無いけど...


「『ワールウィンド』」


やった、うまくいった。私を押さえつけていた狼を風の魔法でどかす事ができた。


「こっちに来ないでぇ!!」


姉弟の姉が叫ぶ。見ると私がさっき攻撃を外した狼が女の子達の方に居た。噛みつこうとして来る狼をツインテールの女の子は双剣で抑え込んでいた。でも女の子は全力が出ないようで、ギリギリ抑え込めているというところだ。やばい!先にこっちの狼を倒した方が良いんだろうけど、そうなったら女の子達の方が!

迷っていると女の子が私に叫んだ。


「ちょっとあなた!一瞬で良いからこの狼に隙を作って!」


「え!?私!?」


「あなたしか居ないでしょ!!隙ができたらこの狼は私に任せて!!」


「わ、分かった!『ミニファイヤー』」


女の子達の方の狼を『ミニファイヤー』で攻撃する。けど、狼にはあまり効かなかったみたいで顔を振って煙を払うだけだった。

でも、女の子が任せてと言ったのを信じてこっちの狼に集中する。


狼が動こうとした瞬間、私の方が先に狼を斬りつける。


私はそのスピードのまま、狼のいる所より少し後ろの所で止まる。

振り向くと狼が倒れていて、その向こうでは女の子達の方の狼が倒れる所だった。


「やった…私の…初めてのバトル……倒せ……た……」


急に視界がぼやけて私は地面に倒れてしまった。そのまま意識が薄れていく。




「……ん……ここは?」


目が覚めると私はベッドに横になっていた。

体を起こして周りを見回してみる。ここは木でできた部屋の中で、窓から夕日が見えた。ベッドの横のサイドテーブルにコップと水差しがあったから水を飲む。すると扉が開いてさっきの姉弟が入ってきた。


「あ!起きたぁ!ミア!天使のおねぇちゃん起きたよ〜」


男の子の声でミアと呼ばれたさっきのツインテールの女の子が部屋に入ってきた。


「おはよう。もう夕方だけどね。あなたは魔力切れで倒れたのよ。魔法の使いすぎ。」


ミアという女の子は初めて会った時より柔らかい雰囲気になっていた。

ちょっとビックリだよ。


「そうなの?それで、狼達はどうなったの?」


「あの狼は霧に包まれて消えていったわ。いつもの事よ。まぁ、あの狼達いつもは村を荒らして消えていくだけで人を傷つける事なんてほとんど無かったんだけどね」


「そっか。あなたやこの子達は怪我してない?」


「私はちょっと怪我したけど大丈夫よ。レイラとレオは怪我してないわ」


ミアという女の子は姉弟の頭をそれぞれ撫でて、姉をレイラ、弟をレオと呼んだ。


「君たちはレイラとレオって言うんだね。無事で良かったよ」


レイラとレオに笑いかけるとレイラが聞いてきた。


「おねぇちゃんはお名前、何て言うの?」


「私はシャーロットだよ。シャーロット・ソレイユ」


「へぇ。じゃぁ、私達を助けてくれてありがとう!シャーロット!」

「ありがとう!」


レイラとレオが満面の笑顔で言う。


「シャーロット…良い名前ね」


「あなたは?」


「私は…ミアよ。ミア・トレス」


「ミア!よろしくね!」


「……ええ。よろしく」


ミアが少し考えるようにしてから答えたのがちょっと気になった。


「そう言えばこの村は何て言うの?」


「フィアータ村よ。そしてここは私の家。」


「へぇ、フィアータ村かぁ。」


「…元気になったのならちょっと散歩に付き合ってくれない?」


「うん?いいよ?」


ミアはレイラ達にちょっとお留守番しててねと言うと私にはついて来てと言って家を出る。

ちょっと曇った夜空。雲の隙間から星の光が覗いている。



ミアの後をついていくと私が最初にミアと会った薔薇畑についた。到着するまで無言で私達は歩いてきた。ミアは立ち止まると私と向き合った。


「シャーロット、ありがとう。あなたがいなかったら私もレイラ達も無事じゃなかったと思うの」


「どういたしまして!私もミアが居なかったら危なかったよ」


「それで...ごめんなさい。あなたはフィアータ村を守ろうとしてくれたのに、私はあなたの話をろくに聞かず転生者だからって悪者って決めつけて、嫌な態度をとってしまって。ほんとにごめんなさい」


「…いいよ。」


ミアの態度が変わったのはこういうことだったんだね。

すぐに答える私に驚いてミアは目を見開く。


「だって、『魔王』が転生者なら私を警戒するのは仕方ないよ」


「ありがとう…」


急に空が晴れて辺りが月の光で明るくなった。

2人で見上げると、月や星がとても綺麗でしばらく眺めた。

ミアはもう一度私と向き合うと、右手を差し出す。


「ねぇ、シャーロット。私の友達になってくれない?」


「え?」


「私、家族が居ないの。私が小さい頃に両親が狼達に殺されて。村には私と同じぐらいの年齢の女の子も居ないし。」


「いいよ!友達!」


私はミアの手を握る。


「よろしくシャーロット」


「うん!よろしく!…うわぁ!ミアが異世界の初めての友達!むっちゃ嬉しい!」


「私も嬉しい」


私達はお互いに顔を見て笑い合い、それからもう一度星空を見上げる。

ミアがツインテールを揺らして振り返り、聞いてくる。


「さぁ、帰りましょう。シャーロットが起きた頃に丁度晩ご飯が出来たのよ。食べるでしょ?」


「食べる!」


私達は今度は並んでミアの家に向かう。



歩きながら私は心の中で考える

ルーナがくれたスキルのおかげでミア達を守れた。それに、ミアと友達にもなれた。

ルーナ、さやか、見ててね。私が『魔王』を倒して、困ってる人を助けてみせる!─────────────────────────────────

第4話「異世界の友達」お読みいただきありがとうございました!

これで第1章「転生」は終わりです!


次回第2章である、第5話からは私が第2章「冒険の始まり」を全て書き終えてから投稿します!投稿がいつ頃になるか分かりませんが投稿する時は近状ノートでお知らせします!次回も読んで下さると嬉しいです!


(プロフィールにあるXのアカウントでも小説投稿のお知らせをしています!良かったらフォローよろしくお願いします!普段は日常ツイート垢なので気軽に話しかけて下さい!)


次回をお楽しみに!

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