第3話 転生者の力

光が収まり、目を開けると風が吹いて薔薇の花が舞い上がった。


「異世界に着いたのかな?」


周りを見ると私は公園などで見かける鳥籠のような建物の真ん中でさっきのドアと装飾の似た茶色いベンチに座っていた。

私の服装などは制服から変わっていて、赤いワンピースと茶色いジャケット。お腹のあたりには茶色いベルトがバッテンになっていた。ベルトには小さい茶色のポーチが腰の右側に付いていて、左側には銀色のレイピアが携えられていた。髪も変わっていて肩に掛かるほどの長さのクリームがかった綺麗な金髪。

ベンチから立って建物の外に行くと辺り一面、いろんな色の薔薇が咲いていて、暖かい日差しを受けて風に揺れている。


「綺麗………そうだ!異世界に来たらアレだよね!」


気がついたら薔薇に見惚れていたけど、アレを確認したいよね!さっきちょっと見たけど、異世界転生でお決まりのアレ!

私はワクワクしながら息を吸う。


『ステータス・オープン!』


すると目の前に『ウインドウ』が現れてこう表示された。


〝ステータス〟


【名前】シャーロット・ソレイユ(風上かざかみひなた)【年齢】14歳 【種族】人間 【レベル】1


〔HP〕30/30 【職業】魔剣士まけんし


〔MP〕60/60 【固有スキル】《マジカルローズ》《パラダイスゲート》《ラーニング・ファスト》《アビリティーアップ》《ソードシップ》《コモン・ラングウィッチ》《ストレージ》


〔攻撃〕10 【魔法】火魔法 レベル1 〈ミニファイヤー〉

          水魔法 レベル1 〈ウォーターカレント〉

〔防御〕10 風魔法 レベル1 〈ワールウィンド〉


〔素早さ〕10



スキルの使い方が気になって《マジカルローズ》の表示にふれると表示が変わる。



《マジカルローズ》

薔薇の魔力を借りて魔法を使う。魔法は実在していない魔法でなくても自分が使いたい魔法が使える。近くに薔薇が無いと魔法は使用できない。自分のために使用、悪事を働くために使用する事は出来ない。レベルアップで使用MPが増加する代わりに威力増加。


効果

赤い薔薇 相手に攻撃する。   青い薔薇 味方を守る。   黄色い薔薇 味方を回復をする。


白い薔薇 望むものを出現させる。   虹色の薔薇 望む奇跡を起こす。


薔薇の数によって威力が変わる。



表示された言葉を全て読み終わり、喜びのあまり大きな声がでた。


「最高!このスキルはあれば異世界絶対楽しいよ!」


「だれ?」


後ろから女の子の声がした。振り向くとピンクの髪を腰まで届くツインテールにした女の子が立っていた。


『ステータスクローズ』


私はそう呟いてステータスを閉じ、女の子と向かい合うようにして椅子から立ち上がる。

立ってみるとその子は私の肩ぐらいまでの身長で、私より年下のようだった。12歳ぐらいかな?


「あなたはだれ?この村に何の用?」


「私は風上かざかみ…ううん、私はシャーロット・ソレイユだよ。何の用って言われても、転生したらここに居ただけなんだけど…ここはどこなの?」


危ない、危ない!うっかり「ひなた」の名前を言いそうになったよ。

今の私は「シャーロット・ソレイユ」だからね!

女の子は私が転生と言うと怖がって青ざめた顔をして一歩下がった。


「て、転生者!?あ、あなた!む、村に近づかないで!!」


「え!?なんでだめなの?」


「転生者は強い力を持ってて、私達に酷いことするんでしょ!?『魔王』のように!」


え!?この世界では転生者って良く思われてないの?

まぁ、『魔王』が転生者だって知られてるんならそうなるよねぇ〜。

とりあえず、悪いことをする気は無いってことを伝えなきゃ。


「私は酷いことなんてしないよ。私は魔王を倒すために転生したようなものなんだ。だから、安心して?」


「ほんとに?」


「ほんとだよ。約束する!」


私は女の子に笑いかけ、指切りをしようと右手の小指を差し出す。

その時、女の子の後ろの方から大きな爆発音がした。


「またあいつらが来たの!?」


女の子はそう言って音がした方に走り出した。私もその後を追いかける。

緩やかな坂が続く道を少し走ると4〜5メートルぐらいの崖で、崖の下には村があった。村から動物の鳴き声が聞こえ、いくつかの家で火事が起きていた。


「ねぇ、何が起きてるの?」


「また魔物が村を襲いにきたのよ。私は村のみんなを助けに行く。あなたはここにいて。」


「私も行く!」


「だめ!さっき私言ったでしょ!転生者は村に近づくなって」


女の子は村を見ながら焦った声で私に向けて言い放つ。私は食い下がろうとしたけど、この様子だと何度言ってもだめと言われそうだったから口を閉じる。

私が何も言わなくなったから、女の子は側にあった木の枝を使って崖の下に降りて村へと走っていった。

何も出来ることが無さそうだったから私は座って自分のステータスをもう一度見ることにした。



しばらくすると村でまた爆発が起きた。

ここからだとよく見えないから一つスキルを発動させる。


『《アビリティーアップ・アイズ》』


このスキルで私の視力は格段にアップする。

スキルは呪文とか言わなくても良いみたいなんだけど、言った方がかっこいいよね!


村を見ると紫のオーラをまとった3匹の狼が牙を剥き出しにして威嚇しているようだった。狼が威嚇している相手はさっきのツインテールの女の子だった。ツインテールの子は銀色の双剣を持って10歳ぐらいの女の子と6歳ぐらいの男の子の姉弟の前でかばうように立っていた。2人を庇いながら戦うのはやりにくいみたいで、自分から攻撃が出来ていない。狼が近づいて来た時にだけ攻撃をしている。


「もう我慢できない!」


『《アビリティーアップ・スピード》』


居ても立っても居られなくなり、私は視力アップのスキルを切って走るスピードがアップするスキルを発動させ、さっきの薔薇が咲いていた所へ走る。


スキルのおかげですぐに着いた。


目立たないように端っこに咲いている赤い薔薇、青い薔薇、黄色い薔薇、そして白い薔薇を摘み取る。そしてスキルを発動させる。


『《マジカル・ローズ》』


すると手で抱えていた薔薇が私の周りを浮いた。

ちょっとびっくりしたけど、驚いてる場合じゃない!


『《ホワイト》』


すると白い薔薇が弾けて白い光になって私の背中に集まると白い翼に変化する。

私が地面を蹴ると翼が羽ばたいて体が浮き、あっという間に地面が遠くなる。


「うわぁ!私、空を飛んでる!」


空を飛べた喜びが溢れる。

けど、すぐに気を引き締めて村に向かう。


「私が村の人たちを助ける!ツインテールの女の子!もう少しがんばって!」─────────────────────────────────

第3話「転生者の力」お読みいただきありがとうございました!


次回第4話「異世界の友達」は11/19の18:00投稿です!

次回も読んで下さると嬉しいです!お楽しみに!

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