国の崩壊
宵@ZIBU
国の崩壊
暖炉の炎がパチパチと音を鳴らしていた。
俺は友人のハンスと一緒に赤い椅子に座りワインを持って談話していた。
「何年ぶりかな?このようにゆっくりと共に過ごせるのは」
「もう七年は経っているはずだ。俺がウィルト山脈に発ったのが確か......十年前とかそこらへんだからな。あのときのお前は細かったな。後、十年前から捕まらない王国唯一の最高重要指名手配犯で金を稼ごうと思っていたんだが......見つからなくてな。まぁどうでもいいハンスはどこに行っていたんだ?」
「僕かい?僕はこのベルロシア王国の王宮で執事として働いているよ。」
「そうかい。」
俺はうなずくように返事をしワインを一口飲んだ。
「良いな。``ヴァイナハテン``は......心が癒やされるようだ」
「ワインの話か?」
俺が問いかけるとハンスは落ち着いた様子で言った。
「いいや、今日の名前だよ」
ハンスはそう言ったがおかしい。今日は確か``クリスマス``のはずだ。だからこうやってハンスといつもは買ったりしない高いワインを冒険して稼いだ金で購入しこうやって暖炉を囲んでいる。
「何を言っているハンス。今日は``クリスマス``だろう」
「今ではそう言われているのか......」
「どうしたハンス?少しおかしいぞお前酔っているのか?」
俺はハンスのことが心配になり言った。
「ああ、酔っているよこの``ヴァイナハテン``とワインにね」
ハンスは落ち着いて言う。
「さっきからヴァイナハテンと言っているが何だそれは」
俺は気になりハンスに問いかけた。
「そうだな......ある一人の英雄の話でもしようか」
ハンスはそう言い語り始めた。
◇ ◆ ◇ ◆
昔々それはベルロシア王国が建国され間もない頃だった。
それはそれはとても喜ばしいことであり国民は皆浮かれ酔っていた。
しかし王国はある問題を掲げていた。
「国王陛下、お世継ぎはどうなったのですか?」
ある貴族が国王に問いかけると、
「うーむ、``男子``が生まれた......」
と国王は言った。
「「「「「おお!」」」」」
周りの貴族はそれを聞き歓喜した.....が、
「と言いたいところなんじゃが......またもや``娘``が生まれた」
国王は落胆し告げた。
それを聞いた瞬間貴族たちは酷く落胆し何かをヒソヒソと話し始めた。
―あの国王本当は王太子殿下が生まれているのに隠しているのではないか?
―あの国王は実は魔族でこの国を滅ぼそうとしているのでは?
貴族たちはヒソヒソとそのような話をしていた。
「静まれェ!国王陛下の御前であるぞ!」
国王の近くにいた宰相が怒声に近い大声をあげた。
その瞬間貴族たちはヒソヒソと話すのをやめた。
「国王陛下、王女はこれで何人目なのですか?」
別の貴族が国王に問うた。
すると国王はゆっくりと言った。
「ハーデンベルク家、ケルン家、クリバディア家、デルヴァイア家、
国王はそう言うと問うた貴族はありえないような顔になった。
それは他の貴族も変わらなかった。
「今日は仕舞だ。次の
こうしてヴァイナハテンは閉じた。
◇ ◆ ◇ ◆
―カン、コツン、コツン。
国王はニヤッとした表情で石づくりでどこか血の匂いを彷彿とさせる地下らしき廊下を歩いていた。
そう、ここは誰もわからない国王の``
国王が歩く廊下には監獄部屋が何百部屋も準備されておりその部屋満帆に人が閉じ込められていた。
国王は趣味を楽しみにしているのかいきいきとした足取りである部屋に向かった。
そして国王は他の監獄より少し広い監獄の前に立ち言った。
「我が息子ハンスよ。今から楽しい時間だ。」
国王はニヤッと笑い心底楽しそうに語りかける。そして鍵を取り出しオリハルコンとミスリルの合金で出来た重い扉の鍵を開け扉を開けた。
そこに現れたのはガリガリにやせ細り質素で破れている服を着せられ背中に大きな斜線の痛々しい傷がある少年だった。
「父上様、今日も一回目はお楽しみになられましたか」
少年は目を虚ろにし機械のように決まっている言葉を淡々と無機質に抑揚をつけず言った。
すると国王は意気揚々として言った。
「よくぞ聞いてくれた!流石我の息子だ。我の
国王がそう言っているにも関わらず少年は虚ろに突っ立っているのみだった。
国王は満足したのか語るのをやめ言った。
「来い」
国王はそう言い歩き始めた。少年は後を追うようについていった。
その後国王は何をしたのかは言うまでもないだろう。
◇ ◆ ◇ ◆
「王国最高重要指名手配だ!!」
ある日国王はそう叫んでいた。
国王の息子ハンスが脱走したのである。
それを国王はハンスを最悪凶悪犯として仕立てた。国王が偽造した罪の数はなんと三十。特に大量殺人、上皇貴族への最大限の不敬罪、そして重罪である強姦罪をピックアップしていた。しかもハンスに懸けた賞金は約一億レイン(日本円で約二十億円相当)と伯爵への貴族位。もうすでに伯爵以上の者には王族親戚の認定証を懸けた。
「あやつめ!我を裏切りおって!引っ捕らえるのだ!」
国王が言わなくても
国王は思っていた。王国全域で指名手配すればすぐに見つかるだろうと。逃げ切れはしないだろうと......。
このときのハンスは13歳だった。
◇ ◆ ◇ ◆
「なんだその壮大な話は?聞いたことがない」
俺はハンスが話した物語を知らなかった。
「それはそうだろう、消えて無くなり隠蔽されたはずの歴史何だから」
「おいおいおい、まっまさかとは思うが本当の話だとは言わないよな......」
俺は恐る恐る聞いた。
しかし帰ってきた言葉は非情だった。
「本当の話だよ。見るかい?背中の傷を」
ハンスはそう言い服を脱いだ。
そして俺は恐れおののいた。
――背中には斜線の痛々しい傷が走っていたからだ。
「ハンスお前......何が言いたい」
俺は少し警戒しながら言った。
「そんな警戒しないでよ。僕もう23歳だよ?10年前の話さ、だがあの国王はまだいるだろうね。」
「それはな......復讐でもするのか?」
「もちろん、そろそろ国が崩壊するよ。ああ、今日``ヴァイナハテン``が行われるには良い夜だ。そうだとは思わないかい?ヴィル君」
彼の目は虚ろではなくキラキラと光っておりその奥には憎悪の深淵が垣間見えた。
国の崩壊 宵@ZIBU @1221puroseka
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